Archive for 17 December 2005

17 December

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 31


 You may be sure Mrs. Darling examined the shadow carefully, but it was quite the ordinary kind.
 Nana had no doubt of what was the best thing to do with this shadow. She hung it out at the window, meaning "He is sure to come back for it; let us put it where he can get it easily without disturbing the children."
 But unfortunately Mrs. Darling could not leave it hanging out at the window, it looked so like the washing and lowered the whole tone of the house. She thought of showing it to Mr. Darling, but he was totting up winter great-coats for John and Michael, with a wet towel around his head to keep his brain clear, and it seemed a shame to trouble him; besides, she knew exactly what he would say: "It all comes of having a dog for a nurse."
 She decided to roll the shadow up and put it away carefully in a drawer, until a fitting opportunity came for telling her husband. Ah me!

 当然のこと、ダーリング夫人はその影を念入りに調べてみました。でもそれは、どうということのない普通の影でした。
 ナナはこの影をどうしたらいいのか、疑いのない確信を持っていました。ナナはこの影を窓の前に吊り下げました。それはつまり、「あの少年はこの影を取りに戻ってくるに違いないから、子供達に面倒をかけることなく彼がたやすく影を取り戻せるところに置いておきましょう」、ということです。
 でも残念なことに、ダーリング夫人はこの影を窓の前にぶらさげておくなんてことはできませんでした。それではまるで洗濯物みたいです。そんなことをしたら、ダーリング家の品格を落としてしまいます。お母さんは影をダーリング氏に見せてみようかと思いました。でもお父さんは、頭をはっきりさせるために濡れたタオルを頭に巻き付けて、ジョンとマイケルの冬物の外套にかかる費用を計算しているところでした。ですからお父さんの邪魔をするのは、気の毒に思われました。それに、お母さんにはお父さんが何と言うか、良く分かっていました。「こんなことになったのも、犬なんかに子守りをさせているせいだ。」
 お母さんは、影をたたんで、抽き出しにしまっておくことにしました。そのうち、お父さんにお話をする機会もあることでしょう。ところがなんと!

 “ピーターが残した影を調べてみたが、どこといって変わったところもない、普通の影であった”、という部分は、語りの手法において用いられた、見事なペテン行為であろう。これほど不可解な、他と変わった影はありえないからである。しかもこの影は、この物語の主題となっている本物の“影”たる存在をカモフラージュするための擬装としても機能しているのである。

用語メモ
 washing(洗濯物):洗濯物を外の人々の目に映る窓の前に干すなどというのは、はなはだ下品なみっともない行いなのである。





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