Archive for 18 December 2005

18 December

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 32


The opportunity came a week later, on that never-to-be-forgotten Friday. Of course it was a Friday.
"I ought to have been specially careful on a Friday," she used to say afterwards to her husband, while perhaps Nana was on the other side of her, holding her hand.
"No, no," Mr. Darling always said, "I am responsible for it all. I, George Darling, did it. MEA CULPA, MEA CULPA." He had had a classical education.
They sat thus night after night recalling that fatal Friday, till every detail of it was stamped on their brains and came through on the other side like the faces on a bad coinage.
"If only I had not accepted that invitation to dine at 27," Mrs. Darling said.
"If only I had not poured my medicine into Nana's bowl," said Mr. Darling.
"If only I had pretended to like the medicine," was what Nana's wet eyes said.
"My liking for parties, George."
"My fatal gift of humour, dearest."
"My touchiness about trifles, dear master and mistress."

 その時は一週間後に訪れたのでした。あの、決して忘れることのできない金曜日でした。勿論、その日は金曜日だったのです。
 「私はとりわけ金曜日には気をつけていなくてはならなかったのに。」後になって、お母さんはお父さんによく語ったものでした。こっち側にはナナが居て、お母さんの片手を握りしめていました。
 「いや、みんな僕の責任だ。この、ジョージ・ダーリングのせいなのだ。」お父さんはいつも答えるのでした。「責められるべきはこの私なり。」お父さんはラテン語の教養があったのです。
 こんな風にして一緒に座り込み、お母さんとおとうさんは、夜毎あの悲劇の金曜日のことを思い出すのでした。そして出来事の全てが頭の中に刻印され、出来の悪い硬貨の模様が裏側に浮き出てくるのと同じように、反対側から漏れ出てくるのでした。
 「私が27番地のお食事会の招待を受けることさえなかったなら。」ダーリング夫人が言うのでした。
 「僕がお薬をナナのお皿に入れさえしなかったら。」ダーリング氏が言うのでした。
「わたしがお薬が好きなふりさえしていたならば。」ナナの目が語っていたのはこういうことでした。
 「私がパーティーが好きなばっかりに。」
 「私がどうしようもない程ユーモアのセンスを持っていたがために。」
 「私が些細なことに小うるさいばっかりに。」

 この場面では、未来が既に予見されていることを示す記述が行われている。これ以降しばらく、子供達が連れ去られた後のダーリング夫妻の述懐の言葉のやりとりが語られるのである。ストーリーの時間軸を切り離し、過去と未来を混淆させるモダニズム的手法が用いられている。これは、後にフォークナーが不器用に多用することになる語り口であった。
 「私がどうしようもない程ユーモアのセンスを持っていたがために。」は、いかにもユーモアのセンスの無い人が言いそうな言葉である。

用語メモ
 Mea Culpa:=my fault(ラテン語)




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連絡先 047ー371ー1375
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