Archive for 19 December 2005

19 December

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 33


 Then one or more of them would break down altogether; Nana at the thought, "It's true, it's true, they ought not to have had a dog for a nurse." Many a time it was Mr. Darling who put the handkerchief to Nana's eyes.
 "That fiend!" Mr. Darling would cry, and Nana's bark was the echo of it, but Mrs. Darling never upbraided Peter; there was something in the right-hand corner of her mouth that wanted her not to call Peter names.
 They would sit there in the empty nursery, recalling fondly every smallest detail of that dreadful evening. It had begun so uneventfully, so precisely like a hundred other evenings, with Nana putting on the water for Michael's bath and carrying him to it on her back.

 そこのところで、必ず誰かが泣き崩れてしまうのでした。ナナの場合はこう思ってしまうからでした。「本当だ。犬なんかを子守りに使ってはいけなかったのだ。」ダーリング氏さえもが、何度もナナの目にハンカチを当ててやったものでした。
 「あのならず者のせいだ。」ダーリング氏は叫ぶのでした。そしてナナもまた、彼に声を合わせるのでした。けれどもダーリング夫人は、決してピーターのことを責めることはありませんでした。お母さんの口許の右の方に、ピーターの悪口を言うことのできない何かがあったのです。
 こうしてみんなは、子供達のいない子供部屋で座り込み、あの恐ろしい晩に起こった出来事のどんな些細な部分をも、慕わし気に思い起こすのでした。その晩は他の百もの晩と全く同じように、平凡な風を装ってやってきました。ナナはマイケルをお風呂にいれる水を汲み、背中にマイケルを乗せて浴槽のところまで連れていきました。

 お母さんだけは、何故かピーターのことを責めたり非難したりすることが出来ないのである。それがダーリング夫人の口許に浮かんでいるキスと何か関係があると語られている。ピーターの存在に秘められた謎を暗示する部分である。

用語メモ
 fiend:“鬼”に相当するおぞましい印象を持った言葉である。善良な一般社会人にとっては、この言葉で呼ばれるのに相応しいのが、ピーターという存在なのである。



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