Archive for 21 December 2005

21 December

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 35


She had found her two older children playing at being herself and father on the occasion of Wendy's birth, and John was saying:
"I am happy to inform you, Mrs. Darling, that you are now a mother," in just such a tone as Mr. Darling himself may have used on the real occasion.
Wendy had danced with joy, just as the real Mrs. Darling must have done.
Then John was born, with the extra pomp that he conceived due to the birth of a male, and Michael came from his bath to ask to be born also, but John said brutally that they did not want any more.
Michael had nearly cried. "Nobody wants me," he said, and of course the lady in the evening-dress could not stand that.
"I do," she said, "I so want a third child."
"Boy or girl?" asked Michael, not too hopefully.
"Boy."
Then he had leapt into her arms. Such a little thing for Mr. and Mrs. Darling and Nana to recall now, but not so little if that was to be Michael's last night in the nursery.
They go on with their recollections.

 ダーリング夫人は、上の二人の子達が、ウェンディが生まれる時の自分とダーリング氏を演じて、遊んでいるのを見つけました。ジョンが言っているところでした。
 「ダーリングさんの奥さん、うれしいお知らせです。あなたはお母さんになられましたよ。」本当に、ダーリング氏がこんな時に口にしそうな言葉付きでした。
 ウェンディは喜びのあまり、踊り始めました。本当にダーリング夫人が行いそうな身振りでした。
 それからジョンが、男の子が誕生する際に相応しいと彼が考えた通りの勿体をつけて生まれ、マイケルはお風呂から、自分も産まれたい、と言って飛び出してきました。でもジョンは、もう子供は欲しくない、と無慈悲に言うのでした。
 マイケルは泣き出しそうになりました。「僕のことなんか、欲しい人はいないんだ。」勿論のこと、白い夜会服の婦人は、黙っていることができませんでした。
 「私は欲しいわよ。」お母さんは言いました。「どうしても、3人目の子が欲しいの。」
 「それは男の子?それとも女の子?」マイケルはあまり期待している風でもなく尋ねました。
 「男の子よ。」
 そこでマイケルは、お母さんの腕の中に飛び込みました。今となっては、ダーリング夫妻とナナにとって、思い出すにはあまりにも些細なことでした。でもこれが、子供部屋で目にしたマイケルの最後の姿であれば、そんなに些細なこととも言えませんでした。
 こんな風に、二人と一匹は思い出話を続けるのでした。

 子供たちは自分たちの両親を演じる遊び(make-believe)をしているのである。“メイク・ビリーブ”は、この小説の進行を支配する根幹的主題としてさらに発展していくことになる。さらに子供達は、自分達自身のことをお話の中に物語っている。ここではお母さんも加わって、「語る」ことそのものが語りの主題として採用されることになる。そしてこれらの総てがお父さん、お母さん、ナナの三者の回想の語りの主題となっているのである。

用語メモ
 pomp(壮麗さ、立派さ):ジョンは、男子である自分が産まれる際には、ウェンディの場合よりもより荘重で、立派な体裁を伴って誕生するはずだと考える。無邪気な男性中心主義である。この感覚が顛倒されて、揶揄の対象となるのが、本作品の基調的展開である。





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