Archive for 22 December 2005

22 December

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 36


 "It was then that I rushed in like a tornado, wasn't it?" Mr. Darling would say, scorning himself; and indeed he had been like a tornado.
 Perhaps there was some excuse for him. He, too, had been dressing for the party, and all had gone well with him until he came to his tie. It is an astounding thing to have to tell, but this man, though he knew about stocks and shares, had no real mastery of his tie. Sometimes the thing yielded to him without a contest, but there were occasions when it would have been better for the house if he had swallowed his pride and used a made-up tie.
 This was such an occasion. He came rushing into the nursery with the crumpled little brute of a tie in his hand.
 "Why, what is the matter, father dear?"
 "Matter!" he yelled; he really yelled. "This tie, it will not tie." He became dangerously sarcastic. "Not round my neck! Round the bed-post! Oh yes, twenty times have I made it up round the bed-post, but round my neck, no! Oh dear no! begs to be excused!"

「その時だったね、僕がつむじ風のように飛び込んで来たのは。そうじゃなかったかい?」ダーリング氏は自分を責めながら言うのでした。実際、その時の彼はつむじ風のようでした。
 まあ、お父さんにもそれなりの言い分はあったのです。お父さんもまた、パーティに出かけるために着替えをしていました。ネクタイを締めるところまでは、全てがうまくいっていました。これは語るには実に驚くべきことなのですが、この人物は、株式だの公債だのについては理解していても、ネクタイをすることは全くの苦手としていたのです。時々はこのやっかいものも、抵抗なく彼に従うこともありました。けれどもこの一家にとって、彼が自尊心を捨てて出来合いのタイを用いていた方が良かったような場合もいくつかあったのです。
 今回がまさにそういう時でした。お父さんはくしゃくしゃになった、どうしようもない頑固者のタイを手にして飛び込んできたのです。
 「まあ、お父さん。一体どうしたと言うのです?」
 「どうしただと!」お父さんはわめきました。誇張でなく実際にわめいたのです。「このタイの奴が、言うことを聞こうとしないんだ。」お父さんは危険な程投げやりになっていました。「僕の首の周りじゃなくて、ベッドの柱に巻き付いてしまうんだ、本当さ。20回もベッド柱に巻き付けてしまったぞ。でも、どうしても首の周りには落ち着いてくれないのさ。全く、どうにかして欲しいものさ。」

 お父さんも子供達と全く同様にその正体はだだっ子であり、機会さえあれば容易にすねて、お母さんに甘えようとするのである。いかに経済の知識があったところで、本当に大人の振る舞いができる社会人など実際にはいないのである。

用語メモ
 sarcastic(冷笑的):“投げやりに”と訳してみた。素直に癇癪を起こす訳でもなく、皮肉な言葉を吐いてふて腐れてみたがるのは、男性一般に特有の典型的な甘えの様態であろう。




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kuroda@wayo.ac.jp



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論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシー2:ファンタシーにおける非在性のレトリック─『最後のユニコーン』のあり得ない比喩と想像不能の情景”を新規公開中




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