Archive for 24 December 2005

24 December

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 38


 "How wildly we romped!" says Mrs. Darling now, recalling it.
 "Our last romp!" Mr. Darling groaned.
 "O George, do you remember Michael suddenly said to me, `How did you get to know me, mother?'"
 "I remember!"
 "They were rather sweet, don't you think, George?"
 "And they were ours, ours! and now they are gone."
 The romp had ended with the appearance of Nana, and most unluckily Mr. Darling collided against her, covering his trousers with hairs. They were not only new trousers, but they were the first he had ever had with braid on them, and he had had to bite his lip to prevent the tears coming. Of course Mrs. Darling brushed him, but he began to talk again about its being a mistake to have a dog for a nurse.
 "George, Nana is a treasure."
 "No doubt, but I have an uneasy feeling at times that she looks upon the children as puppies.
 "Oh no, dear one, I feel sure she knows they have souls."

 「大騒ぎではしゃぎ回ったのでしたね。」その時のことを思い出して、ダーリング夫人は言うのです。
 「あれが最後だったね。」ダーリング氏もうめくように言います。
 「ジョージ、覚えてらっしゃる?マイケルが突然、私に言いましたのよ。『お母さんはどうして僕のことを知るようになったの?』」
 「そうだった!」
 「素敵な子達でしたよね。ジョージ。」
 「みんな僕らのものだった。あの頃は。でも、今はもういない。」
 あの時の浮かれ騒ぎは、ナナが現れたのと同時に止んだのでした。そしてなんとも運の悪いことに、ダーリング氏がナナと体をぶつけてしまったのです。お父さんのズボンは毛だらけになってしまいました。その時はいていたのは、おろし立てだったばかりではなく、お父さんが始めてはいた紐飾り付きのズボンでした。お父さんは涙がこぼれて来るのを我慢するために、唇を噛み締めました。勿論、お母さんがブラシをかけてあげました。でもお父さんはまた、犬を子守りに雇っているのは間違っている、と文句を言い初めました。
 「ジョー、ナナは素晴らしい子守りよ。」
 「確かにね。でも僕は、時々ナナが僕らの子供達のことを子犬みたいに扱っているような気がするんだ。」
 「そんなことはありませんわ、あなた。ナナは子供達が魂を持っていることを良く知っていますわ。」

 拗ねたり、ふて腐れたり、癇癪を起こしたりする父親である。洋の東西を問わず、男達の本性は皆一緒なのである。

用語メモ
 soul(魂):キリスト教では、永遠の魂を持っているのはキリスト教徒の人間だけだとされている。犬も人魚も異教徒も、キリスト以前に生を受けていた善人達も、魂を持っていて死後永遠の至福に預かることは許されていない。




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kuroda@wayo.ac.jp



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論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシー2:ファンタシーにおける非在性のレトリック─『最後のユニコーン』のあり得ない比喩と想像不能の情景”を新規公開中




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