Archive for 27 December 2005

27 December

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 41


 "Father first," said Michael, who was of a suspicious nature.
 "I shall be sick, you know," Mr. Darling said threateningly.
 "Come on, father," said John.
 "Hold your tongue, John," his father rapped out.
Wendy was quite puzzled. "I thought you took it quite easily, father."
 "That is not the point," he retorted. "The point is, that there is more in my glass that in Michael's spoon." His proud heart was nearly bursting. "And it isn't fair: I would say it though it were with my last breath; it isn't fair."
 "Father, I am waiting," said Michael coldly.
 "It's all very well to say you are waiting; so am I waiting."
 "Father's a cowardly custard."
 "So are you a cowardly custard."
 "I'm not frightened."
 "Neither am I frightened."
 "Well, then, take it."
 "Well, then, you take it."
Wendy had a splendid idea. "Why not both take it at the same time?"
 "Certainly," said Mr. Darling. "Are you ready, Michael?"

 「お父さんが先だ。」マイケルが言いました。この子は疑り深い質なのでした。
 「きっと、気持ちが悪くなってしまうだろうな。」ダーリング氏は脅すように言いました。
 「早く、お父さん。」ジョンが言いました。
 「黙っていなさい、ジョン。」お父さんは厳しい口調で言いました。
ウェンディは、なんだか訳が分からなくなってしまいました。「お父さんは、すぐに飲んでしまうと思ってたのに。」
 「そういう事じゃないんだ。」ダーリング氏は答えました。「問題はだ、マイケルのスプーンのお薬よりも、僕のコップのお薬の方が沢山あるってことだ。」お父さんの誇り高い心は、張り裂けそうになっていました。「これはどう見ても公平じゃない。これが今際の時であっても、どうしても言っておきたいね。」
 「お父さん、早く。」マイケルが冷たい声で言いました。
 「早く、なんて言うけど、君だって早く飲めばどうだ。」
 「お父さんの卑怯者。」
 「君だって卑怯者だ。」
 「僕は怖くなんかないよ。」
 「僕だって怖くなんかないさ。」
 「じゃあ、飲んだら。」
 「じゃあ、君が飲めよ。」
ウェンディは素晴らしい考えが浮かびました。「二人で一緒に飲んでしまえばいいんだわ。」
 「その通りだ。」ダーリング氏は言いました。「準備はいいか、マイケル?」

 ダーリング氏の口喧嘩の才能は、中々のものである。最年少のマイケルと、真正面からどうどうと渡り合っている。本人は気付いていないようだが、ただの銀行員や会社員には真似のできない、独特の幼児的才質を備えているのかもしれない。

用語メモ
 custard:卵と牛乳と砂糖から作る“カスタード”のことである。マイケルはおそらく“bastard”と言い間違えたのだろう。ダーリング氏がそのまま付き合っているのは、えらい。





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