Archive for 29 December 2005

29 December

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 43


 "It was only a joke," he roared, while she comforted her boys, and Wendy hugged Nana. "Much good," he said bitterly, "my wearing myself to the bone trying to be funny in this house."
 And still Wendy hugged Nana. "That's right," he shouted. "Coddle her! Nobody coddles me. Oh dear no! I am only the breadwinner, why should I be coddled--why, why, why!"
 "George," Mrs. Darling entreated him, "not so loud; the servants will hear you." Somehow they had got into the way of calling Liza the servants.
 "Let them!" he answered recklessly. "Bring in the whole world. But I refuse to allow that dog to lord it in my nursery for an hour longer."
 The children wept, and Nana ran to him beseechingly, but he waved her back. He felt he was a strong man again. "In vain, in vain," he cried; "the proper place for you is the yard, and there you go to be tied up this instant."
 "George, George," Mrs. Darling whispered, "remember what I told you about that boy."

 「ただのジョークだったんだよ。」ダーリング夫人が男の子達を慰め、ウェンディがナナを抱きしめている中で、ダーリング氏はどなるように言いました。「結構なことだね、この僕が一家のもの達を面白がらせてやろうとして骨身を磨り減らしているというのに。ダーリング氏は苦々し気に言いました。」
 まだウェンディはナナを抱きしめているばかりです。「いいさ。」ダーリング氏は叫びました。「ナナのご機嫌をとってやればいい。誰も僕のことなんか、気にもかけてくれないんだ。僕はただ、稼いでくるだけの人さ。僕のことなんか、どうでもいいだろうさ。」
 「ジョージ、お願いですから。」ダーリング夫人が言いました。「そんな大きな声を立てないで下さいね。召し使い達に聞こえてしまうじゃありませんか。」どういう訳か、彼等はリザのことを“召し使い達”と呼ぶようになっていたのです。
 「聞こえるがいいさ。」ダーリング氏は投げやりな口調で言いました。「世間の人みんなに聞いてもらうがいい。でも僕は、これ以上一時間たりとも、あの犬にうちの子供部屋で好き勝手にさせるつもりはないぞ。」
 子供達は泣き出しました。ナナはダーリング氏のところにとんで行って、懇願しました。でもお父さんはナナを押しやりました。ダーリング氏は再び自分が威信を取り戻したような気がしてきました。「無駄だ。無駄だ。」大きな声でダーリング氏は言いました。「お前のいるべきところは前庭だ。今直ぐ、庭に出して紐につないでやる。
 「ジョージ、ジョージ。」ダーリング夫人がささやきました。「あの少年の事覚えてらっしゃるでしょ。」

 お手伝いといえばリザ一人きりしかいないくせに、大勢の奉公人を抱えたお屋敷の暮らしを真似ているダーリング夫妻である。ダーリング氏ばかりでなく、ダーリング夫人さえもが自己充足的なメイク・ビリーブの世界に生きているのである。

用語メモ
 lord it:“lord it over”で、“いばりちらす”、“偉そうにしている”の意となる。“it”は仮の目的語のようなもの。





「ミクシィ」でコミュニティ「アンチ・ファンタシー」を開設しました。
◆「最後のユニコーン」に関するSue Matheson氏の論文の解説等を行っています。
◆ アニメーション版「最後のユニコーン」における視覚表現についての解説を進行中です。
◆ ピーター・ビーグルに関する書誌データを公開中です。

http://mixi.jp/view_community.pl?id=427647

参加希望の方は、以下のアドレスにご連絡下さい。招待メールをお送りします。

kuroda@wayo.ac.jp



メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシー2:ファンタシーにおける非在性のレトリック─『最後のユニコーン』のあり得ない比喩と想像不能の情景”を新規公開中



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