Archive for 04 December 2005

04 December

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 18


I don't know whether you have ever seen a map of a person's mind. Doctors sometimes draw maps of other parts of you, and your own map can become intensely interesting, but catch them trying to draw a map of a child's mind, which is not only confused, but keeps going round all the time. There are zigzag lines on it, just like your temperature on a card, and these are probably roads in the island, for the Neverland is always more or less an island, with astonishing splashes of colour here and there, and coral reefs and rakish-looking craft in the offing, and savages and lonely lairs, and gnomes who are mostly tailors, and caves through which a river runs, and princes with six elder brothers, and a hut fast going to decay, and one very small old lady with a hooked nose. It would be an easy map if that were all, but there is also first day at school, religion, fathers, the round pond, needle-work, murders, hangings, verbs that take the dative, chocolate pudding day, getting into braces, say ninety-nine, three-pence for pulling out your tooth yourself, and so on, and either these are part of the island or they are another map showing through, and it is all rather confusing, especially as nothing will stand still.

人の心の地図というものを見たことはおありでしょうか。お医者さん達は時に人の体の他の部分の地図なら描くことはあります。そしてその地図は、当人にとってはとても意味深いものになる筈です。けれどもお医者さん達が子供の心の地図を描こうとしているのを見てみると、それはひどく込み入っているだけでなく、いつもくるくる回ってしまうのです。その表面には体温の表のように折れ曲がった線がいっぱいあります。これらはひょっとしたら、この島の道なのかもしれません。というのは、ネヴァランドはいつも多かれ少なかれ、一つの島なのです。あちらこちらにびっくりするような鮮やかな色がついていて、サンゴ礁と、沖合いにはどうやら海賊船らしい船も浮かんでいます。それから野蛮人達と人気の無い隠れ家と、大抵は仕立屋である小人達と、川の流れる洞穴と、6人の兄を持った王子様と、見る間に朽ち果てて行くあばら屋と、鉤鼻をしたとても小柄な老婆もいます。それだけなら地図としては比較的簡単です。けれどもそこには始めて学校に行った時のこととか、宗教や父親達や丸池や針仕事や殺人や絞首刑や与格をとる動詞やチョコレート・プディングの日やズボン吊りを付けたり、自分で歯を抜いてまあ大体いつも3ペンスもらうとか、そんなようなこともやはりあります。これらがみんなその島の内部のことなのやら、あるいは透けて見えるもう一つの島のことかとなると、かなりややこしくなってはきます。じっと止まっているものは何一つとしてないからです。

“人の心の地図”というものを持ち出した、バリお得意の奇想である。Peterの支配する世界Neverlandが、子供達の心の中の主観の世界であることが暗示されている。しかし心の世界だけが唯一の実世界ではなく、日常の些末な現実世界の印象が主観の中に侵入し、意識を混乱させるのである。観念論的実在の把握を不安に陥れる、現象世界の影の存在を忘れないのが、Barrieのスタンスである。この醒めた感覚が本作品においては、antifantasyの要素として辛口に機能していくこととなる。

用語メモ
 offing:海の“沖”をあらわす言葉である。
 rakish:帆柱を後ろに倒した、快速で走る海賊船に多い船の造りである




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