Archive for 05 December 2005

05 December

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 19


Of course the Neverlands vary a good deal. John's, for instance, had a lagoon with flamingoes flying over it at which John was shooting, while Michael, who was very small, had a flamingo with lagoons flying over it. John lived in a boat turned upside down on the sands, Michael in a wigwam, Wendy in a house of leaves deftly sewn together. John had no friends, Michael had friends at night, Wendy had a pet wolf forsaken by its parents, but on the whole the Neverlands have a family resemblance, and if they stood still in a row you could say of them that they have each other's nose, and so forth. On these magic shores children at play are for ever beaching their coracles. We too have been there; we can still hear the sound of the surf, though we shall land no more.

勿論、ネバー・ランドには様々なものがあります。例えばジョンのネバー・ランドは珊瑚礁があってフラミンゴがその上を飛んでおり、ジョンはフラミンゴを撃ったりします。でもマイケルのネバー・ランドは、マイケルががとても小さいせいもあって、フラミンゴの上を珊瑚礁が飛んでいます。ジョンは砂浜の上に引っくり返したボートの下で暮らしていて、マイケルの家は草で編んだ小屋でした。そしてウェンディは、木の葉をきれいに縫い合わせた家に住んでいました。ジョンには友達は一人もいませんでした。マイケルの友達は、夜に訪れました。ウェンディは捨てられた狼の子をペットにしていました。いろんな違いはあっても、ネバー・ランドには一家の同じ特徴を窺うことができます。ですからネバー・ランドを一列に並べたら、みんな同じ形の鼻だね、などと指摘することができるでしょう。こんな不思議の海辺で子供達はいつまでも小舟を浮かべて遊んでいるのでした。私達も以前はそうだったのです。私達もまだ渚の音を耳にすることはできます。上陸することはもう無理ですけど。

 再びネバー・ランドが、主観の中の心象世界であることが暗示される。ネバー・ランドは子供達個々の独立した内面世界であると共に、互いの意識の共存を許す交わりの空間でもある。そこでは誤解に基づいた矛盾も、観念的多重世界の一つを形成する要素として積極的に機能することになる。ピーターとウェンディの間に生起した、キスと指貫の意味交替の可能世界の生成と同等の機構が既にここで暗示されている。
 ネバー・ランドが個々の別個の主観の世界でありながら、それぞれが同心円的連続性を持って重ね合わせの存在様態を示すものでもあることが、見事なファンタシーに対する総括として機能している。心象世界における意識の連帯の可能性こそロマン主義の基本原理であり、外界世界をも取り込む心理学的な手法による実在世界の再解釈こそ、ファンタシー文学世界の背後に潜む創造原理となる世界解式だったのである。

用語メモ
 wigwam:南洋の小島で利用される草葺きの小屋である。
 coracles:南洋の小島で用いられる小型のボートである。




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