Archive for 01 February 2005

01 February

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 124


"How do you come here, sir?"
"On my stomach," said Schmendrick, "and unintentionally, but in friendship nonetheless."

「いかにしておいでなされた?」
尋ねられたシュメンドリックは答えた。「腹這いにて参りました。本意ではありませんでしたが、恨んではおりませぬ。」

 いかにして(どういう訳で)やってきた?と聞かれて「腹ばいで。」(無理矢理馬に乗せられて)と答えてしまったのである。この章ではさらわれてきたシュメンドリックばかりでなく、彼が森の中で出会った山賊の一行も、等しく現実的な卑近な姿を強調して描かれることになる。それはおそらく永遠の存在であるユニコーンのあくまでも高潔な在り方との対照をなすと共に、この後シュメンドリックが魔法の力を発揮して呼び出してしまうロビン・フッドの幻影とも見事に対照をなすものであるらしい。

用語メモ
 卑近さ(vulgarity):「小説」と呼ばれるものが題材としてとりあげている現実の通俗的な矮小さは、ファンタシーの嗜好する崇高さ(sublime)の対極に位置するものであろう。しかしながらある種の極めて自省的なファンタシーにおいては、現実を象徴する卑近さが独特の処理を施して見事に活用されることもあり得る。


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(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」を新規公開中)

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