Archive for 16 February 2005

16 February

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 139


But he knew before he called on it that whatever had visited him for a moment was gone again, leaving only an ache where it had been.

けれども彼は、魔法に呼びかけを行う前から、暫くの間彼のもとに訪れていたものがどのようなものであれ、その場所にただ痛みだけを残して、また立ち去ってしまっていることが分かっていました。

 キーワード“magic”に関連する部分である。「やって来たり、行ってしまったり」する魔法の力のあり方は、この作品のあちこちで繰り返し語られている。魔法使いとは世界の背後に潜む超自然の力に対して来訪を呼びかける役割を果たすものなのである。

用語メモ
 インスピレーション(inspiration):ギリシア・ローマの古典の世界においては、詩人や音楽家は創作に取り掛かる前に、芸術の女神に霊感の喚起を求めて呼びかけるのが常であった。崇高な発想や玄妙な想像力は、人間個人の能力の裡から得られるようなものではなく、外部世界から特定の神格を経由してもたらされるものとして理解されていたのである。「神」とは世界全体と人間存在の個々を歓喜と畏怖を通して結び付ける関係性の別名でもあった。


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(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」を新規公開中)


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