Archive for 18 February 2005

18 February

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 141


Hard silver clouds were melting as the sky grew warm; shadows dulled, sounds lost their shape, and shapes had not yet decided what they were going to be that day.

硬質の銀の雲の連なりが、空が暖まるにつれて溶けかかっていました。無数の影が輪郭を鈍らせ、音はその形を失い、物どもの形は今日これから何になろうか、まだ決めかねていました。

 夜明けを間近にして、夜の暗闇の中の情景が変化を受けつつある際の描写である。新鮮な繊細さに満ちた語句の使用法は、ことさら詩的感覚の鋭敏さを印象づけるものとなっている。キーワード“poetic phrases”に関連する部分である。"sounds lost their shape"(音がその形を失った)の箇所は、聴覚を視覚のごとく扱って描写している。Edgar Allan Poeの好んだ語法である。

用語メモ
 素朴表現:見上げた目に映る夜明け前の空の色合いの変化を、知的な感覚である視覚による印象で語るかわりに、「暖まる」という触感を暗示する素朴な印象に変換して語っているところが興味深い。時にして即物的な程に素朴な感覚は、詩的興趣をかき立てる重要な契機となる。


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(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」を新規公開中)


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