Archive for 02 February 2005

02 February

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 125


"I have heard that you are the friend of the helpless and the enemy of the mighty, and that you and your merry men lead a joyous life in the forest, stealing from the rich and giving to the poor. I know the tale of how you and Jack Jingly cracked one another's crowns with quarter-staves and became blood brothers thereby; and how you saved your Molly from marriage to the rich old man her father had chosen for her." In fact, Schmendrick had never heard of Captain Cully before that very evening, but he had a good grounding in Anglo-Saxon folklore and knew the type.

「私の耳にしたところではあなたは弱きを助け、強きを挫き、富める者からは奪い、貧しい者には施しながら、仲間達と森の中で愉快な生を楽しんでいるとのことです。また、あなたとジャック・ジングリーが棒術の試合をして相打ちになり、その後は無二の親友になったという話や、奥方のモリー様が父親によって無理矢理金持ちの老人のもとに輿入れさせられようとしているのを助けた折の次第などもうかがっております。」こうは言ったものの、実際はシュメンドリックはこの晩になるまでキャプテン・カリーのことなど耳にしたことはなく、ただアングロ・サクソン系の民話とその典型について良く理解していただけなのでした。

 魔法の技はたいしたことは無いくせに、文学的教養と人への取り入り方だけはうまいSchmendrickである。彼の能力と適性の示す魔法の習得とは正反対の性向は、極大と極小の反転的合一の原理を満足するものであると思われる。

用語メモ
 森:中世までのヨーロッパでは森、あるいは“荒野”(wilderness)は人が人としての尊厳ばかりか、人間という基本的属性さえも保つことが叶わない異次元空間を意味していた。森の中は社会の規範も、物理法則さえも通用しない、魔法や超自然の怪物達の支配する領域であった。村を追われて森で暮らすことを余儀なくされた追放者は「狼」と呼ばれたのである。その中でロビン・フッドの仲間達は「陽気に楽しく暮らしていた」と歌われるのである。


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(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」を新規公開中)



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