Archive for 08 February 2005

08 February

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 131


"There are thirty-one, to be exact, though none are in the Child collection just at present..."

「正確に言うと、私のことを歌ったバラッドは全部で31あるんだ。現在のところチャイルド・コレクションに収められたものはまだないんだが。」

 キャプテン・カリーは自らシュメンドリックに対して、自分を題材にして歌われたバラッドの数が31もあることを教える。勇ましい冒険に満ちた生涯が自然に人々の口にのぼり、詩に歌われることとなったロビン・フッドの場合とは対照的に、カリーの場合は実際の生き方よりも冒険を讃えたバラッドの方に対して大変自覚的である。自分のことが歌われていると彼が語るバラッドも、実はカリーが自分で作ったものに過ぎないのである。

用語メモ
 Child Collection:米国人のFrancis James Child(1825~96)によってEnglandとScotlandの民謡が収集され、“Child Collection”として編纂されたものが残っている。ロビン・フッド伝説の母体を形成するものである。CullyはChildのことを知っているのだから、本当ならこの物語の舞台は少なくとも19世紀中ごろ以降ということになる。意図的なanachronismの一例と考えられる。主題的には、キーワード“antifantasy”に関連する。



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(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」を新規公開中)

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