Archive for 13 April 2005

13 April

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 195


"The hero has to make a prophecy come true, and the villain is the one who has to stop him--though in another kind of story, it's more often the other way around. And a hero has to be in trouble from the moment of his birth, or he's not a real hero. It's a great relief to find out about Prince Lir. I've been waiting for this tale to turn up a leading man."

「英雄というものは予言を成就をさせなければならない。そして悪漢というものは、英雄の使命を阻害しようとするものだ。別のお話の中では、しばしばこの役割は反対になることもあるが。とにかく英雄は誕生の瞬間から面倒ごとに巻き込まれるものと決まっている。でなければ本物の英雄とはいえないのだ。僕はリア王子のことを知ることができて、ほっとしたよ。僕はこのお話がストーリーを先導する人物を登場させてくれるのをずっと待っていたんだ。」

 キーワード“story”に関連する。登場人物自身が、自分がフィクションの登場人物の一人であることを明確に自覚しており、物語としての話の筋の展開を予測しているのである。些末な夾雑物に満ちた矮小な現実世界とは異なり、荒唐無稽なとりとめのない「お話」だからこそ、本来あるべき崇高な真実が具現化することが許されるのである。キーワード“reality”と相反的に機能するantifantasyの戦略であるが、「非模倣的な仮構物」の保持する「お話」というものの根源的な機能でもあったものである。

用語メモ
 英雄(hero):“英雄”という訳語にはいくらかの違和感もあるが、お話や伝説の主役として、特別な役割を果たすべき運命的な使命を帯びて生まれて来たものが“hero”である。当然ながら現実世界には本物の“hero”は存在し得ない。


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作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス
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(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)


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