Archive for 16 April 2005

16 April

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 198


The magician stood erect, menacing the attackers with demons, metamorphoses, paralyzing ailments, and secret judo holds.

魔法使いはすっくと立ち上がり、襲いかかって来る男達に、悪魔を呼び出してやるぞ、魔法の力で変身させてやるぞ、身体を痺れて動けなくさせてやるぞ、柔道の恐ろしい隠し技をかけてやるぞ、と脅しの言葉を投げかけました。

 魔法に自信が無いので口で脅かすのである。それさえも自信が無いので、柔道の秘技などというはったりをかましている。羅列された言葉が本来の意味を失墜して、ナンセンスあるいは諧謔へと転訛する “anticlimactic catalogue”の一例である。ふざけた感覚は、キーワード“antifantsy”と関連するものである。

用語メモ
 急遁法(anticlimax ):意味性を漸増的に累加して展開されることが予期されている筈の記述もしくは場面が、読者あるいは観客の期待に反してその絶頂(climax)に当たる部分で突然失速し、記述なり描写の初期の目的が頓挫してしまうかのような事態が招かれてしまうことにより、羅列あるいは反復が本来の意図と反した皮肉な意味で用いられる結果となる、という実は極めて古典的かつ伝統的な修辞法の一つである。


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作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス
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(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)


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