Archive for 17 April 2005

17 April

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 199


The Red Bull did not know her, and yet she could feel that it was herself he sought, and no white mare. Fear blew her dark then, and she ran away while the Bull's raging ignorance filled the sky and spilled over into the valley.

レッド・ブルはユニコーンがユニコーンであるとは分らないのでした。けれどもユニコーンは彼が白い雌馬などではなく、自分のことを捕まえようとしていることが分りました。その時恐怖が彼女に襲いかかり、体の輝きを失わせました。そしてユニコーンは踵を返して逃げ始め、牡牛の猛り狂う無知は空を覆い、溢れて谷間に流れ込みました。

 初めて姿を現した宿敵レッド・ブルとユニコーンの対決の有り様である。他の全てのユニコーン達をこの世から駆逐してしまったこの怪物は、実はユニコーンを視認することが出来ないというのである。彼の与える無気味な恐怖感以上に、彼の無知が強調されていることが興味深い。この新機軸の怪物の正体と裏の主人公ハガード王との関係性を考察する上での鍵となる情報である。

用語メモ
 無知(ignorance):世俗的知識の欠落は無知とは異なり、無意識と連接して深遠なる叡智ともなり得る。レッド・ブルの体現する無知性とは、世界と自身の存在意義と生の目的性を全く顧みることの無い、アメリカという文化的辺境国に独特の現世主義と重なるものであるのかもしれない。


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作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス
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(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)


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