Archive for 19 April 2005

19 April

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 201


He had been huge when she first fled him, but in the pursuit he had grown so vast that she could not imagine all of him.

レッド・ブルは最初にユニコーンが彼の前から逃げ出した時、既に巨大な体躯をしていました。けれどもユニコーンを追い立てていくうちに、彼の身体の大きさはさらにふくれあがり、もうユニコーンには彼の身体の全てを頭に思い浮かべることもできない程になっていました。

 レッド・ブルの質量としての存在属性の不定性と、質量と性質、あるいは印象という存在形相を分別すること自体が意味をなさない、他者の主観の内部をも含めた総合的連続体としての独特の存在性向を強く暗示する部分である。ユニコーンの心中に抱いた恐怖感が、この怪物の体躯を拡大するかのようである。現象物あるいは超越的存在を記述するにあたっての、一意的な客観的描写の困難性を自覚する、この相対性に対する先鋭的な感覚は、『最後のユニコーン』全体を支配する思想的特質となっている。

用語メモ
 imagination:知覚と認識の全てが、この主観の中に形成された世界像を示す言葉に属するものとして記述し得る。もし絶対的に確実な客観的記述というものがあり得ないとするならば、むしろ個々のimaginationの中にこそ世界の実相があることになる。


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作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス
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(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)


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