Archive for 23 April 2005

23 April

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 205


Molly and the magician scrambled over great tree trunks not only smashed but trodden halfway into the ground, and dropped to hands and knees to crawl around crevasses they could not fathom in the dark. No hoofs could have made these, Molly thought dazedly; the earth had torn itself shrinking from the burden of the Bull.

モリーとシュメンドリックは巨大な木々の残骸の上を乗り越えて進みました。それらは打ち砕かれているだけでなく、踏み付けられて地面の中に半分埋まり込んでいるのでした。四つん這いになって、暗闇の中では深さも知れない地の裂け目を避けて進まなければなりませんでした。モリーは頭をくらくらさせながら思いました。レッド・ブルの蹄がこんな裂け目を穿った筈はない。牡牛の重さを嫌って、地面の方が自分から避けてしまったのだ。

 レッド・ブルの途轍も無い巨大さが残した足跡として、倒された木々や裂けた地面が残されている。あまりの凄まじさに実際にこのような出来事が起こったとは信じ難いばかりではなく、むしろ原因となる牡牛自身の実体性そのものに疑念が持たれるのである。事象の生成に対して、動作を行った主体と変化をもたらされた客体という関係性の喪失が暗示されているのである。

用語メモ
 主客の別:西洋的論理に従えば、現象を起こす本体が先ず存在し、一方がもう一方に対して動作を働きかけるものとされる。そこには単一方向的な能動と受動の関係が厳然と存在する。しかし伝統的な東洋思想における事象の生成とは、絶えず遷ろい変化し続ける全体の示す一つの局相として理解されるものに過ぎない。行為を行うものとその行為を受けるものを分別する感覚はもともと無かったのである。

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作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス
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質問に対するお答え を新規公開

(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)



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