Archive for 24 April 2005

24 April

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 206


Molly Grue, a little crazy with weariness and fear, saw them moving the way stars and stones move through space: forever falling, forever following, forever alone. The Red Bull would never catch the unicorn, not until Now caught up with New, Bygone with Begin

モリー・グルーは、疲れと恐怖のために正気を半分失ってしまい、星や石が宙を移動していくのを見るような気持ちで、ユニコーンとレッド・ブルの姿を見ていたのでした。彼等はいつまでも二人きりで、いつまでも一方は落ち続け、いつまでももう一方がその後に続いていくかのようでした。レッド・ブルは決してユニコーンに追い付くことはないんだろう。「今」が「新た」によって追いつかれ、「過去」が「始まり」によって追いつかれるまで。

 逃げるユニコーンと追う牡牛の姿を見守るモリーの視点は、奇妙なことに現世的束縛から離れて、無限遠の彼方から全てを傍観するかのごとく浮き上がっている。時間の奴隷として些末な現象性に支配されるがままに生き続ける人間の主観の裡に、永遠の彼方を見通す超越的把握力の来訪が可能であることを暗示するかのごとくである。

用語メモ
 悟脱:精神科の用語を用いて語れば、離人症。薬物中毒者の言葉を用いて語れば、トリップ。修行僧の言葉を用いれば、悟り。肉体的疲労と精神的疲労の極みが瞬間的にモリーに与えた全体性の知覚である。


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作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス
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(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)


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