Archive for 28 April 2005

28 April

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 210


"You have magic," she said. She heard her own voice, as deep and clear as a sibyl's. "Maybe you can't find it, but it's there. You called up Robin Hood, and there is no Robin Hood, but he came, and he was real. And that is magic. You have all the power you need, if you dare to look for it."

「あんたには、魔法の力がある。」モリーは言いました。彼女はそう言う自分の声が、巫女の言葉のように深く透き通っているのが分りました。「あんたは自分では分らないかもしれないけど、ちゃんとその力を持っているんだよ。ロビン・フッドを呼び出すことだってできたじゃないか。ロビン・フッドなんてものは本当には存在しない。でもやって来た。そして本物だった。あれこそ魔法の力だったよ。あんたには必要な力はみんな備わっている。その気になって探しさえすればいいんだ。」

 彼女には自分の声が、“神の言葉を伝える巫女のように力強くはっきりと語るのが聞こえた”というのである。モリーという人物の外側から、彼女にこれらの言葉を語らしめる力が訪れてきているのである。丁度魔法の力が「やって来たり、行ってしまったり」するのと同様である。あるいは古代ギリシアで、ミューズの神に祈りを捧げた詩人の許にインスピレーションがもたらされたのと同様の仕組みである。魔法は、魔法使いに対してだけでなく、様々の存在物の許に折々の機会を選んで訪れることができる。キーワード“magic”と結果的に関連する。

用語メモ
 巫女(sibyl):神の声を伝える媒介となる役目を果たす女が巫女である。魔法の原理に基づく世界観においては、自我や個人として保有する能力は余り重要視されることはない。高次元の世界の全体性からもたらされる崇高な力の媒体として選ばれるのは、むしろ自意識や目的性の希薄な、言わば透明性の精神なのである。


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作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス
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(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)


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00:00:00 | antifantasy2 | 1 comment | TrackBacks