Archive for 29 April 2005

29 April

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 211


Schmendrick regarded her in silence, staring as hard as though his green eyes were beginning the search for his magic in Molly Grue's eyes.

シュメンドリックは黙ってじっとモリーを見つめました。彼の緑の目が、モリー・グルーの目の中から、自分の魔法の力を探し出そうとしているかのようでした。

 シュメンドリックが改めてモリーの存在意義を認め、モリーを通して本来自分の中にある筈の本物の力を探し出そうとしている。シュメンドリックのものである魔法の力が、モリーの目の中に見出されるというのである。このような理解を成り立たせる世界の原理機構と無数の事物の間相互に有る微妙な関係性が、このお話の立脚点となっている特有の思想的前提を物語るものである。

用語メモ
 空、空隙(void):シュメンドリックは魔法の行使に関する技術的知識も、魔法を成立させる世界の原理機構に対する理解も十分に持っている筈である。おそらく彼に欠けているものは、あらゆる状況を臨機応変に自然に迎え入れるのに不可欠な、ゆとりの要素である知識的・心理的な“無”として機能する、ある種の空白部分なのだろう。


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作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス

(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)


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