Archive for 07 April 2005

07 April

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 189


"I stood by the strange cradle for a long time, pondering while the snow fell and the cats purred prophecy."

「私はこの不思議な揺り籠の傍らで、長い間立ち尽くしていました。雪が降り注ぎ、猫達が喉を鳴らして予言をつぶやく中で、思いに沈んでいたのです。」

 “猫が咽を鳴らして予言をつぶやいていた”という表現が印象的である。猫の果たすであろう預言者あるいは超越的助力者としての役割は、第1章において登場した蝶の場合とともに、通例の童話やファンタシー作品において妖精の果たしていた機能と同等のものである。本作品においては個々の動物の持つ性格的特徴として、従来妖精達が担っていたその基本属性に対する変換操作が施されていることになる。キーワード“animal image”と深く関連する部分である。

用語メモ
 妖精、妖怪(fairies):妖精も妖怪も英語においては“fairy”である。この物語においてはユニコーンやハーピー等の神話的存在は登場するが、妖精(fairy)に該当するものは存在しない。それに代替して個々の動物が保持する独特の性向が見事に自然界の人間原理を跳躍した超越的能力を反映している。自然物そのものが“超自然”な存在である、東洋的世界観に類似した感覚があることが指摘できる。

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作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス
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(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」を公開中)






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