Archive for 13 May 2005

13 May

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 225


In the tawny morning, King Haggard's castle seemed neither dark nor accursed, but merely grimy, rundown, and poorly designed. Its skinny spires looked nothing like a bull's horns, but rather like those on a jester's cap. Or like the horn of a dilemma, Schmendrick thought. They never have just two.

黄色い朝の光の中では、ハガード王の城は無気味でも呪いがかかったようにも見えませんでした。ただ荒れ果て、薄汚れていて、みっともないだけでした。頼り無さそうに細い尖塔は、もう牡牛の角のようには見えず、道化師の帽子の角のようでした。あるいはディレムマの角だな、とシュメンドリックは思いました。面倒事は、二回だけで済むということは、決してないんだ。

 夜が開け、朝の光の中で見えるハガード王の城の姿は、現実的な卑近さを強調して描かれている。この作品のアンチファンタシー的要素を良く物語る部分である。幻想を排して眺める事物の姿は、恐ろしくも、美しくもない。

用語メモ
 dilemma:両刃の剣。一方を立てれば、もう一方が立たなくなるような困窮した状態。英語の世界では二本の角で表現される。ユニコーンの一本の角と、牡牛の2本の角の対照が興味深い。


メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス

(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)






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