Archive for 26 May 2005

26 May

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 238


Something rumbled somewhere deep and near. The tower trembled like a ship run aground, and answered with a low, stone wail. The three travelers cried out, scrambling to keep their feet on the shuddering stairs, but their guide pressed on without faltering or speaking. The younger man whispered earnestly to the Lady Amalthea, "It's all right, don't be afraid. It's just the Bull." The sound was repeated.

 何かが何処か近くだけれどずっと深い処で地鳴りのような音を立てました。塔は船が陸に乗り上げた時のように揺れ動いて低い石の呻きをあげ、この響きに答えました。三人の旅人達は叫び声をあげ、おののき立つ階段の上で身を支えようと壁にしがみつきました。けれども案内をする二人の歩哨はよろめきもせず、一言も発せずに進んでいきました。若い方の歩哨がアマルシア姫に囁きかけました。「大丈夫です。恐れることはありません。牡牛が動いただけです。」そしてもう一度地鳴りの音が響きました。

 ユニコーンの一行が塔の上の謁見室に案内される途中で城が激しく振動する。歩哨はそれが牡牛のせいであると言う。レッド・ブルの存在がハガード王の城そのものと一体化していることを思わせるような場面である。

用語メモ
 象徴と即物性:“塔”はしばしば権力や意志の象徴として中世ロマンス等の物語世界の中に登場する。ここではハガード王の城、その塔、そしてこれらと不即不離の関係にあるらしいことが暗示されているレッド・ブルが、単なる表現技巧上の象徴の域を超えて、その純粋に概念的な独特の存在性向を示しつつある。


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作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス

(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)


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