Archive for 03 May 2005

03 May

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 215


The Red Bull raised his huge, blind head and swung it slowly in Schmendrick's direction. He seemed to be waning and fading as the gray sky grew light, though he still smoldered as savagely bright as crawling lava. The magician wondered what his true size was, and his color, when he was alone.

レッド・ブルはその巨大な盲目の頭を上げて、ゆっくりとシュメンドリックの方に向けました。その牡牛の姿は、地面の上を這って流れる溶岩のようにまだ荒々しくくすぶっていたにもかかわらず、薄暗い空が明るさを増すに連れて、薄くかすんでいくように思われたのでした。シュメンドリックは、ユニコーンがいなくなった時、牡牛の本当の大きさはどのくらいなのだろう、本当の色はどんな色をしているのだろうと思いました。

 レッド・ブルの圧倒的な巨大さという印象と相反して、不可解な実体感の無さがその実際の大きさと色について語られている。ユニコーンが姿を隠したと同時に、牡牛の姿も突然色あせたというのである。

用語メモ
 “when he was alone”:“牡牛が一人きりになった時”とは“ユニコーンの姿が見えなくなった時”と同様である。ユニコーンという一方の存在があって初めて、レッド・ブルの身体の大きさもその色合いも、はっきりとした実体感を持つものとして感じられるのである。逆に言えばユニコーン無くして牡牛の存在感は得られることはないのである。



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作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス

(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)


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