Archive for 30 May 2005

30 May

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 242


"But the pleasures of court," the magician cried,"the music, the talk, the women and fountains, the hunts and the masques and the great feasts--"
"They are nothing to me," King Haggard said. "I have known them all, and they have not made me happy. I will keep nothing near me that does not make me happy."

 「しかし王宮の楽しみ事というものがあるではありませんか。」シュメンドリックは言いました。「音楽に、語らいに、女たちに、噴水に、狩りや舞踏会や饗宴などー」
 「そのようなものは儂にとっては無に等しい。」ハガード王が答えました。「儂はお前が今語ったものの総てを味わってみたけれど、そのいずれも儂に幸福を与えてくれることは無かった。儂に幸福を与えてくれることの無いものなど、傍らにおいておくつもりは無い。」

 シュメンドリックの勧める華やかな宮廷の楽しみごとの数々について、取り付きようもない冷淡な態度で拒否するハガード王の言葉である。最高級の本物以外には心を満たすことができない真の教養人には、喜びを与えるべき娯楽や遊戯の全てが、苦痛以外の何物でもないおぞましいものに変質する。知識と教養に付随するディレムマである。

用語メモ
 stoicism(禁欲主義):快楽も喜びも、全ての安逸を受け入れることを拒否して、求道的な生活のみを生き甲斐にしようとする生の態度である。当然ながら最も純粋で高級な快楽以外の何物をも享受することを拒む、最高の贅沢の主張ともなる。


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作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス

(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)


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