Archive for 06 May 2005

06 May

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 218


"The magic chose the shape, not I," Schmendrick answered. "A mountebank may select this cheat or that, but a magician is a porter, a donkey carrying his master where he must. The magician calls, but the magic chooses. If it changes a unicorn to a human being, then that was the only thing to do."

「魔法がこの姿を選んだんだ。俺ではない。」シュメンドリックは答えました。「奇術師だったら、あれこれの技を選んで行いもするだろう。だが魔法使いというのは、ただの運び手なんだ。主人を言われた処まで乗せて行くだけのロバみたいなものだ。魔法使いは、魔法を呼び出すことはできる。でも、その効果を選ぶのは、魔法の方なんだ。魔法がユニコーンを人間の姿に変えたのなら、それが唯一すべきことだったんだ。」

 キーワード“magic”と関連する重要な部分である。普遍的な原理機構の存在を前提として構築された、自立的なシステムとしての魔法の本性が物語られている。堅固な法則性が強調されるのは、魔法の技をふるう技術についてではなく、むしろ魔法の顕現と対応すべき世界全体の運行状況に対する的確な判断なのである。

用語メモ
 運び手(porter):個人としての意志を持たない、単なる仲介者に過ぎない存在である。権限の行使者というよりは、むしろ道具に過ぎない。あるいは“messenger”とも呼ばれる。


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作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス

(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)


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