Archive for 07 May 2005

07 May

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 219


For a moment she turned in a circle, staring at her hands, which she held high and useless, close to her breast. She bobbed and shambled like an ape doing a trick, and her face was the silly, bewildered face of a joker's victim. And yet she could make no move that was not beautiful.

しばらくの間彼女は円を描いて回っていました。両手を意味も無く胸元まで持ち上げて、じっと見つめていました。芸をする猿のように、ひょこひょこと足を動かし、ペテン師に出し抜かれるおろかな犠牲者のような唖然とした顔つきでした。けれども彼女の身のこなしの一つとして、美しくないものはないのでした。

 いきなり人間の姿を与えられて、愕然としているユニコーンの様子である。ぎこちなく、間が抜けていて、しかも新鮮な独特の存在感が見事に描き出されている。優れた描写力と表現力が、そのまま力強い創造力として表出した見事な例である。

用語メモ
 victim:災厄を被る犠牲者のことをこの言葉で呼ぶと同時に、他愛無く騙され、利用される愚かな者のことも、しばしばこの言葉を用いて語られる。


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作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス

(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)


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00:00:00 | antifantasy2 | 11 comments | TrackBacks