Archive for 08 May 2005

08 May

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 220


"The Red Bull," the girl whispered. "Ah!" She was trembling wildly, as though something were shaking and hammering at her skin from within. "He was too strong," she said, "too strong. There was no end to his strength, and no beginning. He is older than I."

「レッド・ブルは、あまりにも強過ぎました。」娘は小さな声でつぶやきました。何かが彼女の身体の内側から強い力で叩き、揺さぶっているとでもいうかのように、激しく震えながら言いました。「あの牡牛は強過ぎました。彼の力は尽きることがありません。彼の力には、始まりさえありませんでした。レッド・ブルは、私よりも、もっとオールドなのです。」

 レッド・ブルについて語るユニコーンの言葉である。このお話の意味を形成する核となると思われる、レッド・ブルの存在の謎を物語る情報であると共に、このお話の基幹的なキーワード“old”という言葉の定義の一端をなすとも思われる情報でもある。

用語メモ
 “There was no end to his strength, and no beginning. ”:力に“end”が無いとは、限界を知らない強大な力であるということ。しかし“end”の“終わり”の意味にかけて“始まり”もまた無い、と語られているところに微妙な意義性が付加されている。つまりレッド・ブルがもともと存在しなかった、あるいは何にも増してより古い、究極の始源的存在であることが暗示されている。


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作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス

(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)


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