Archive for 09 May 2005

09 May

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 221


"Why did you not let the Bull kill me?" The white girl moaned. "Why did you not leave me to the harpy? That would have been kinder than closing me in this cage."

「何故あなたはレッド・ブルに私を殺させてくれなかったのです?」白く輝く娘は、うめくように言いました。「ハーピーに私を殺させてくれていればよかったのに。この檻のような身体に閉じ込めるより、その方がずっと有り難いことでした。」

 人間の姿を与えられてしまったことに、意外な程の衝撃と絶望の気持ちを示すユニコーンの言葉である。“mortal”な肉体という枷が、ユニコーンにとっては“cage”(檻)として感じられるというのである。反転的にユニコーンの独特の性向である“永遠性”を物語る科白となっている。キーワード“immortal”と関連する重要な部分である。このような思弁的な考察を展開する感覚が、このお話の根幹を占めているのである。

用語メモ
 cage(檻):人間の姿を与えられたことを“檻の中に閉じ込められた”と理解する特殊な感覚が語られている。“身体”を“檻”と呼ぶことによって得られる独特の修辞法であると共に、主題の斬新な即物的提示の試みの一つでもあろう。


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作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス

(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)


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