Archive for 01 July 2005

01 July

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 274


"If she had touched me," he said very softly, "I would have been hers and not my own, not ever again. I wanted her to touch me, but I could not let her. No cat will. We let human beings caress us because it is pleasant enough and calms them--but not her. The price is more than a cat can pay."

 「もしもアマルシア姫が僕に触れていたら」、猫はそっとつぶやきました。「僕は彼女のものになってしまっていただろうな。僕は彼女に触れて欲しかった。けれどもそうさせることはできなかった。猫は決してそんなことはしない。僕達は人間に体を撫でさせてやる。それは気持ちがいいからだし、人間たちの気持ちを安らげるからだ。でも、アマルシア姫は違う。その代償は猫にはあまりにも大き過ぎるものだ。」

 猫の保有する独特の性向が見事に語られている。全てのものが抱くユニコーンに対する憧れの気持ちとは、どこか異質な部分を備えているのが猫である。猫とはやはり、世界と個を関係づけるべき宇宙の存在原理に対して無関心な、異世界に属すべきむしろ異教の神に近い存在なのだろうか。

用語メモ
 price(代償):“reckoning”が実際に行われた奉仕の算定に基づく代償であるのに対して、“price”はある行為に不随する、避けることのできない支払うべき対価である。


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作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス

(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)


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