Archive for 14 July 2005

14 July

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 287


She would have left him then, but he spoke to her in a voice that only heroes have, as many animals develop a certain call when become mothers. "A dream that returns so often is like to be a messenger, come to warn you of the future or to remind you of things untimely forgotten. Say more of this, if you will, and I will try to riddle it for you."

お姫様はそこで、王子のもとを立ち去ってしまおうとしたのでした。けれどもその時、王子は英雄だけが持つ声を用いて彼女に語りかけたのです。様々な動物達が母親になると、子を呼び寄せるいくつもの声を使い分けることができるようになるように。「何度も繰り返し見る夢というものは、何かを告げようとしているのです。将来の危機を警告するか、あるいはうっかり忘れ去ってしまったことを思い出させてくれるのです。もっとあなたの夢のことをお話しして下さい。あなたのためにその謎を解いてさしあげましょう。」

 詩を書いて捧げることよりも、もっと効果的な、そして内実のある振る舞いをリア王子がついに見つけ出した場面である。「英雄」というものにふさわしい、真摯で実直な、雄々しい振る舞いと物言いである。この物語は硬直した理想に対しては手加減のない揶揄を与えるが、真の理想に対する素朴な憧憬を失うことは決してない。

用語メモ
 夢と謎(riddle):夢はしばしば日常性と理性の限界を超越して、究極の真実そのものに対して人の心を解放する唯一の手立てとなる。しかし限界ある人間的理解力はその至高の真実を直視した時、理解不能の謎として受け止めることしかできない。しばしば予言の言葉に対して謎解きの手順が必要とされるのは、そのためである。


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論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(14)“意味消失による意味性賦与の試み──『最後のユニコーン』における矛盾撞着と曖昧性”を新規公開中


作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス



オープン・キャンパス英文学科模擬授業のお知らせ

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』の世界

7月17日、14時30分より、15時15分まで
和洋女子大学 東館9ー2教室にて開催
(時間、教室が変更になりました。)

『最後のユニコーン』と魔法の記述

 Peter Beagle の長篇ファンタシー作品『最後のユニコーン』(The Last Unicorn)では、魔法についての記述に独創的な表現が駆使されており、“あり得ない物語世界”と“永遠の美と真実”というファンタシー文学の中心的主題を効果的に導き出すことに成功している。

1 魔女の語る言葉

Her voice left a flavor of honey and gunpowder on the air.

魔女の声は蜂蜜と火薬の匂いを空気に漂わせました。

2 魔女の発した魔法の呪文

There was a smell of lightning about the unicorn when the old woman had finished her spell.

3 魔法使いの唱えた魔法の呪文

Schmendrick took a deep breath, spat three times, and spoke words that sounded like bells ringing under the sea. He scattered a handful of powder over the spittle, and smiled triumphantly as it puffed up in a single silent flash of green. When the light had faded, he said three more words. They were like the noise bees might make buzzing on the moon.

アニメーション映画 “The Last Unicorn”の紹介、
『最後のユニコーン』についての質疑応答も行います。


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