Archive for 16 July 2005

16 July

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 289


Then the Lady Amalthea smiled at him for the first time since she had come to stay in King Haggard's castle. It was a small smile, like the new moon, a slender bend of brightness on the edge of the unseen, but Prince Lir leaned toward it to be warm. He would have cupped his hands around her smile and breathed it brighter, If he had dared.

その時、アマルシア姫はハガード王の城に来て以来、初めて彼に微笑みかけたのでした。それは新月のような小さな微笑みで、姿の見えない月を縁どるほっそりとした明りの筋のようでした。けれどもリア王子はそこに体を寄せて身を温めました。王子はできるものなら、彼女のほほ笑みの周りを両手で囲って、そっと息をかけてこのともしびをかきたてたい、と思ったのでした。

 キーワード“poetic phrases”に関連する部分である。アイロニーの捻りも一切ない、純朴なばかりの詩的表現である。

用語メモ
 新月(new moon):わずかに光の筋だけが輪郭をなす新月に、アマルシア姫の微笑みがなぞらえられている。三日月の姿に笑みを浮かべる口元を読み取ったのは、日本の和歌の感覚であった。


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論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(14)“意味消失による意味性賦与の試み──『最後のユニコーン』における矛盾撞着と曖昧性”を新規公開中


作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス



オープン・キャンパス英文学科模擬授業のお知らせ

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』の世界

7月17日、14時30分より、15時15分まで
和洋女子大学 東館10階、演習室1にて開催
           (また、教室が変更になりました。)

『最後のユニコーン』と魔法の記述

 Peter Beagle の長篇ファンタシー作品『最後のユニコーン』(The Last Unicorn)では、魔法についての記述に独創的な表現が駆使されており、“あり得ない物語世界”と“永遠の美と真実”というファンタシー文学の中心的主題を効果的に導き出すことに成功している。

1 魔女の語る言葉

Her voice left a flavor of honey and gunpowder on the air.

魔女の声は蜂蜜と火薬の匂いを空気に漂わせました。

2 魔女の発した魔法の呪文

There was a smell of lightning about the unicorn when the old woman had finished her spell.

魔女が呪文を唱え終わった時、ユニコーンの体の周りには稲光りの臭いが漂っていました。

3 魔法使いの唱えた魔法の呪文

Schmendrick took a deep breath, spat three times, and spoke words that sounded like bells ringing under the sea. He scattered a handful of powder over the spittle, and smiled triumphantly as it puffed up in a single silent flash of green. When the light had faded, he said three more words. They were like the noise bees might make buzzing on the moon.

シュメンドリックは深く息をつき、3度つばをはきかけて、海の底で鐘の鳴り響くような言葉をつぶやきました。それからはきかけたつばの上に一握りの粉をまき、音も無く緑の光を発して燃え上がると、勝ち誇ったように微笑みました。光がおさまると彼はさらに3つの言葉をつぶやきました。それらはミツバチが月の上で羽音を立てているような響きでした。

アニメーション映画 “The Last Unicorn”の紹介、
『最後のユニコーン』についての質疑応答も行います。


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