Archive for 17 July 2005

17 July

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 290


Marveling at his own boldness, he said softly, "I would enter your sleep if I could, and guard you there, and slay the thing that hounds you, as I would if it had the courage to face me in fair daylight. But I cannot come in unless you dream of me."

自分自身の大胆さに驚きながら、リア王子はそっと言いました。「できるものなら、あなたの夢の中に入りたいと思うのです。そしてあなたを守って差し上げたい。あなたを追い回すものを倒して差し上げたいのです。もしもその魔物が陽の光の中で私の前に姿を現すだけの勇気を持っていたらきっと私がしていたように。けれどもあなたが私のことを夢に見て下さらない限り、私はあなたの夢の中には入れないのです。」

 怪物退治と戦利品の献上という、硬直した英雄としての振る舞いを捨て去り、詩を書いて捧げるというぎこちない求愛の方法も忘れ、英雄としてふさわしいお姫さまに対する自然な接し方を身に付けたリア王子の言葉である。行動の結果のみが重要なのではなく、何事においても出来事の生成過程の示す肌理に従った、正しい行い方というものが流儀として存在すると考えるのが、ファンタシーの根幹にある思想的特質である。

用語メモ
 hound:名詞ならば“猟犬”。上のように動詞として用いられれば“追い回す”という意味になる。


メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(14)“意味消失による意味性賦与の試み──『最後のユニコーン』における矛盾撞着と曖昧性”を新規公開中


作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス



オープン・キャンパス英文学科模擬授業のお知らせ

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』の世界

7月17日、14時30分より、15時15分まで
和洋女子大学 東館10階、演習室1にて開催
           (また、教室が変更になりました。)

『最後のユニコーン』と魔法の記述

 Peter Beagle の長篇ファンタシー作品『最後のユニコーン』(The Last Unicorn)では、魔法についての記述に独創的な表現が駆使されており、“あり得ない物語世界”と“永遠の美と真実”というファンタシー文学の中心的主題を効果的に導き出すことに成功している。

1 魔女の語る言葉

Her voice left a flavor of honey and gunpowder on the air.

魔女の声は蜂蜜と火薬の匂いを空気に漂わせました。

2 魔女の発した魔法の呪文

There was a smell of lightning about the unicorn when the old woman had finished her spell.

魔女が呪文を唱え終わった時、ユニコーンの体の周りには稲光りの臭いが漂っていました。

3 魔法使いの唱えた魔法の呪文

Schmendrick took a deep breath, spat three times, and spoke words that sounded like bells ringing under the sea. He scattered a handful of powder over the spittle, and smiled triumphantly as it puffed up in a single silent flash of green. When the light had faded, he said three more words. They were like the noise bees might make buzzing on the moon.

シュメンドリックは深く息をつき、3度つばをはきかけて、海の底で鐘の鳴り響くような言葉をつぶやきました。それからはきかけたつばの上に一握りの粉をまき、音も無く緑の光を発して燃え上がると、勝ち誇ったように微笑みました。光がおさまると彼はさらに3つの言葉をつぶやきました。それらはミツバチが月の上で羽音を立てているような響きでした。

アニメーション映画 “The Last Unicorn”の紹介、
『最後のユニコーン』についての質疑応答も行います。


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