Archive for 21 July 2005

21 July

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 294


"The Red Bull is no more mine than the boy is, and he does not eat, and he cannot be stolen. He serves anyone who has no fear--and I have no more fear than I have rest."

「レッド・ブルはリアが儂のものでないのと同様に、やはり儂のものではない。この怪物は物を食べることもないし、儂の許から奪われることもない。奴は恐れを知らぬ者になら、誰であれその言うことをきく。そして儂は安らぎを全く持たぬように、いかなる恐れの気持ちも持たないのだ。」

 ハガード王の語るレッド・ブルの謎に関わる不可解な情報である。恐れを知らぬ者とは、現実の価値観のいかなるものをも心から信じることが出来ず、与えられたいかなるものに対しても満足を得ることを知らない者であろう。そのような深い絶望と虚無感を抱いてしまう程に、透徹した知識と理解を持ってしまった者の影として生まれるものは、全くの無知であろうか。

用語メモ
 fear(畏怖):恐れを知らぬ者には、満足も喜びもない。所有物に対するいかなるこだわりも、到達に対するいかなる執着も持ち得ぬ者とは、他者との関係性の全てを断ち切る程に自我の孤絶を求めた極限の実存の追求者であろう。
 そんなものにも唯一所有と独占という満足を与えてくれたのがユニコーンなのであった。


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論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(14)“意味消失による意味性賦与の試み──『最後のユニコーン』における矛盾撞着と曖昧性”を新規公開中


作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス


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