Archive for 06 July 2005

06 July

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 279


She felt relieved that the prince was giving up his courtship, and amused as well, and somewhat sad. "Girls like poems better than dead dragons and magic swords," she offered.

モリーは王子様が求愛を止めにしようとしているのを知って、安心した気持ちになりました。そしてちょっと愉快な気持ちにも、また何か悲しい気持ちにもなったのです。「女の子というものは、ドラゴンの死骸や魔法の剣なんかより、詩の方がもっと好きなものなのよ。」王子様にこう言ってあげました。

 ヒーローとしての姫君への求愛を続けることを諦めたリア王子に対する、モリーの複雑な気持ちである。ロマンスの世界の硬直した価値観が破綻する様を目にすると、ロマンスの世界を支配していた一元的価値に対する憧憬の念も沸き上がるのである。このような二律背反した微妙な感覚が、この物語の根底にあるアイロニーの要素として指摘できるだろう。

用語メモ
 求愛(courtship):中世ロマンスにおいて騎士が貴婦人達に対して示すこととなっている、はなはだ型にはまった敬意と愛情の表現法である。大抵は騎士同士で戦いあうか、あるいは何かを殺して、その死骸を献上することになるのである。


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論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(14)“意味消失による意味性賦与の試み──『最後のユニコーン』における矛盾撞着と曖昧性”を新規公開中


作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス



オープン・キャンパス英文学科模擬授業のお知らせ

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』の世界

7月17日、14時20分より、
和洋女子大学 東館11階、演習室3にて開催

『最後のユニコーン』と魔法の記述

 Peter Beagle の長篇ファンタシー作品『最後のユニコーン』(The Last Unicorn)では、魔法についての記述に独創的な表現が駆使されており、“あり得ない物語世界”と“永遠の美と真実”というファンタシー文学の中心的主題を効果的に導き出すことに成功している。

1 魔女の語る言葉

Her voice left a flavor of honey and gunpowder on the air.

魔女の声は蜂蜜と火薬の匂いを空気に漂わせました。

2 魔女の発した魔法の呪文

There was a smell of lightning about the unicorn when the old woman had finished her spell.

3 魔法使いの唱えた魔法の呪文

Schmendrick took a deep breath, spat three times, and spoke words that sounded like bells ringing under the sea. He scattered a handful of powder over the spittle, and smiled triumphantly as it puffed up in a single silent flash of green. When the light had faded, he said three more words. They were like the noise bees might make buzzing on the moon.

アニメーション映画 The Last Unicorn の紹介
『最後のユニコーン』についての質疑応答も行います。


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