Archive for 09 July 2005

09 July

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 282


"One r, anyway, I think," Molly said. "Schmendrick"--for the magician had just stooped through the doorway-- "how many rs in 'miracle'?"
"Two," he answered wearily. "It has the same root as 'mirror.'"

 「とにかく“r”は一つだと思ったけど。」モリーは言いました。「シュメンドリック!」魔法使いが丁度戸口をくぐって来たところでした。「“miracle”には“r”はいくつある?」
 「二つだ。」シュメンドリックは疲れた様子で答えました。「“鏡”(mirror)と同じ語源なんだ。」

 気のない様子で間違ったことを答えてしまうシュメンドリックである。しかし答えの後半部分は実は真実である。“miracle"も“mirror”も、実際に語源は同じなのである。語源のmiraculumは、“wonderful thing, marvel”。またmirariは、 “to wonder at”。そしてmirusは、“wonderful”の意味であった。だから“admire”(称賛する)も“morror”と同様の語源を持つ言葉となる。つまり鏡(mirror)は鏡面的対称物として自我の影の存在を際立たせる機能を果たし、魔法の顕現の優れた小道具として用いられ、奇跡(miracle)の到来を約束する鍵となる。このような原理機構を持つ宇宙の本質に対する崇敬の念が“賞賛”(admiration)なのである。

用語メモ
 語源(root):英単語の多くはギリシア語、あるいはラテン語の語源を持つ。その他としてはヘブライ語、古代フランス語等様々な言語が語源としてある。語源をたどることにより、言葉本来の担っていた深い意義性が再確認できるのである。


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論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(14)“意味消失による意味性賦与の試み──『最後のユニコーン』における矛盾撞着と曖昧性”を新規公開中


作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス



オープン・キャンパス英文学科模擬授業のお知らせ

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』の世界

7月17日、14時30分より、15時15分まで
和洋女子大学 東館9ー2教室にて開催
(時間、教室が変更になりました。)

『最後のユニコーン』と魔法の記述

 Peter Beagle の長篇ファンタシー作品『最後のユニコーン』(The Last Unicorn)では、魔法についての記述に独創的な表現が駆使されており、“あり得ない物語世界”と“永遠の美と真実”というファンタシー文学の中心的主題を効果的に導き出すことに成功している。

1 魔女の語る言葉

Her voice left a flavor of honey and gunpowder on the air.

魔女の声は蜂蜜と火薬の匂いを空気に漂わせました。

2 魔女の発した魔法の呪文

There was a smell of lightning about the unicorn when the old woman had finished her spell.

3 魔法使いの唱えた魔法の呪文

Schmendrick took a deep breath, spat three times, and spoke words that sounded like bells ringing under the sea. He scattered a handful of powder over the spittle, and smiled triumphantly as it puffed up in a single silent flash of green. When the light had faded, he said three more words. They were like the noise bees might make buzzing on the moon.

アニメーション映画 “The Last Unicorn”の紹介、
『最後のユニコーン』についての質疑応答も行います。


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