Archive for 25 September 2005

25 September

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 360


Suddenly the unicorn screamed. It was not at all like the challenging bell with which she had first met the Red Bull; it was an ugly, squawking wail of sorrow and loss and rage, such as no immortal creature ever gave. The castle quaked, and King Haggard shrank back with one arm across his face. The Red Bull hesitated, shuffling in the sand, lowing doubtfully.

突然、ユニコーンは叫び声をあげました。それは初めてレッド・ブルと出会った時の、挑戦の雄叫びとは全く異なったものでした。それは悲哀と喪失感と怒りの入り交じった、不死の存在が発するものには似つかわしくない、耳障りな叫び声でした。その時城が揺れ動き、ハガード王が片手で顔をかばって後ずさりしました。レッド・ブルは砂をかき散らし、疑わし気に鼻を鳴らして、たじろぎました。

 キーワード“immortal”に関連する箇所である。ユニコーンが本来の属性である不死性を損なってしまっていることが暗示されている。それこそがこの物語において描かれている、主題上の核となる決定的な事実なのである。

用語メモ
 rage(怒り):およそ本来のユニコーンには似つかわしくない、醜い振る舞いである。リア王子との邂逅が彼女に与えたものは、永遠の存在としての本来の属性の喪失だったのである。


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論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(14)“意味消失による意味性賦与の試み──『最後のユニコーン』における矛盾撞着と曖昧性”を新規公開中


作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス


大学祭英文学科公開授業のお知らせ

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』の世界

11月5日(土)、11月6日(日)の両日開催

The Last Unicornー映画化の最新情報

 1982年のアニメーション版は日本では未公開だが、欧米では熱狂的ファンも多い。“アメリカ”の主題歌が今また話題になっている。
 2005年公開予定で製作進行中の実写版は、今世界中のホームページで注目を浴びている。

1 ユニコーンとは

伝説に語り伝えられたユニコーン:プリニウスの「博物誌」の記述

Pliny describes the unicorn as being very ferocious, similar in the rest of its body to a horse, with the head of a deer, the feet of an elephant, the tail of a bear; a deep, bellowing voice, and a single black horn, two cubits in length

プリニウスによれば、ユニコーンはとても獰猛で、身体そのものは馬と同様だが、頭は鹿のようで、足は象のようで、尾は熊のようで、唸る声はとても重々しく、2キュービットの長さの黒い角を持っているということだ。

伝説上のユニコーンとは様々の動物の組み合わせ、“キメラ”(chimera)にも似た存在であった。

 クリュニー美術館所蔵のタペストリー:「貴婦人とユニコーン」
 中世的“アレゴリー”の世界の中のユニコーン像

2 『最後のユニコーン』のユニコーンは、これらとは全く異なる存在属性を与えられている。

ユニコーンを語る独特の描写と比喩の用法
She was very old, though she did not know it, and she was no longer the careless color of sea foam, but rather the color of snow falling on a moonlit night.

彼女は、自分では知らなかったけれど、とても年とっていた。そして彼女はもう海の泡のような無邪気な白い色ではなく、月の照らす晩に降る雪のような白い色をしていた。


But her eyes were still clear and unwearied, and she still moved like a shadow on the sea.

けれどもユニコーンの目はまだ透き通っていて疲れを知らず、彼女は
海の上の影のように身体を運びました。

She did not look anything like a horned horse, as unicorns are often pictured, being smaller and cloven-hoofed, and possessing that oldest, wildest grace that horses have never had, that deer have only in a shy, thin imitation and goats in dancing mockery.

彼女はユニコーンがしばしば絵に描かれていたように、角のついた馬のような姿はしていなかった。体は馬よりも小さく、蹄は二つに割れていて、馬が決して所有したことのない、そして鹿はただ薄っぺらなおずおずとした物真似でしか所有したことがなく、そして山羊はおどけて踊るような形でしか持っていない“オールド”で“ワイルド”な優美さを備えていた。










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