Archive for October 2006

31 October

学園祭公開授業 3

和洋女子大学学園祭公開授業のお知らせ

最後のユニコーンの世界 

The Last Unicornと影の主題
ーアニメーション版The Last Unicorn における映像表現

11月4日、5日
東館11階3科共用演習室3にて
1時より4時まで
(自由に入・退出できます。)

 アニメーション映画「最後のユニコーン」(1982)は、1968年に出版された原作の隠された主題であった「影と本体の関係性」を、映像表現として巧みに再編成することに成功している。原作の形而上的で難解な影の主題の根幹的解釈を行う前に、映像表現による影というモチーフの応用例を即物的に確認していくことにより、意外な緻密性を備えたこのアニメーション映画の完成度の高さを味わってみたい。




 これまで暮らしてきた森を後にして外の世界に出たユニコーンは、世界全体に大きな変化が起こっていることを知る。誰も彼女の姿を目にしても、ユニコーンだと分からないのである。農夫は彼女を見つけると、捕まえようとしてベルトを抜き、わなを作る。彼の目に映ったユニコーンは、市場で高く売れそうな美しい雌馬である。彼の心の中の欲望の投影として、農夫はユニコーンの影を見ている。





 ユニコーンを捕まえようとして近付く農夫である。地面に映った影だけが、ユニコーンの真実の姿を表している。ユニコーンが足を踏み出した外の世界は、真の存在とその影が逆転して現れる、影の世界であった。




 農夫のもとを逃れた後、道ばたでうずくまるユニコーンの姿を、通りがかりの男が見下ろしている。生きることに疲れ果てたような彼の目には、やはりユニコーンはただの雌馬のようにしか見えていない。希望に満ちた真実のかわりに、光を失った影のみを見ようとする、不可解な人々の世界なのである。

◆論文作成等でご利用の方には、研究書「アンチ・ファンタシーというファンタシー」を差し上げます。当日お申し出下さい。
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30 October

学園祭公開授業 2

和洋女子大学学園祭公開授業のお知らせ

最後のユニコーンの世界 

The Last Unicornと影の主題
ーアニメーション版The Last Unicorn における映像表現

11月4日、5日
東館11階3科共用演習室にて
1時より4時まで
(自由に入・退出できます。)

 アニメーション映画「最後のユニコーン」(1982)は、1968年に出版された原作の隠された主題であった「影と本体の関係性」を、映像表現として巧みに再編成することに成功している。原作の形而上的で難解な影の主題の根幹的解釈を行う前に、映像表現による影というモチーフの応用例を即物的に確認していくことにより、意外な緻密性を備えたこのアニメーション映画の完成度の高さを味わってみたい。

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 狩人達の「ユニコーンは、みんないなくなった。」という言葉を聞いて不安にかられたユニコーンは、泉に自分の姿を映して、自分自身のあり方について改めて思いめぐらす。これまでは自分の美しい姿を映し出して、ただ満足の気持ちを覚えていたユニコーンにとっては、自己の存在の意味に対する疑問を抱くことは、完璧であった筈の神話的存在の霊的な揺らぎを体験することである。

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 そんなユニコーンの前に一匹の蝶が姿を現す。「そよ風から躍り出てきた」と語られているように、あまりにも微小でほとんど無に等しい存在性に属する蝶は、反転して全てに繋がる記憶と意識を持っているかのように、とりとめのない、けれども常軌と理性を逸した深い真実を語ってくれることとなる。彼はユニコーン自身の影であり、他の全てのものの影でもあり得るかのような、時空と精神の連続体としての判断と知力を示す。

7

 蝶の言葉に耳を傾けるユニコーンの姿である。

“You can find the others if you are brave. They passed all the ways long ago. And the Red Bull ran close behind them and covered their footprints.”
(勇気を失うことさえなければ、仲間達を見つけることができます。ユニコーン達は遠い昔にあらゆる道を走り去り、赤い牡牛がその後を追い、足跡を消し去ってしまいました。)

蝶の姿がユニコーンの顔の上に影を落としているのだが、彼等の交わした会話そのものが、ユニコーン自身の夢想でもあるかのように読み取れる。


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29 October

学園祭公開授業

和洋女子大学学園祭公開授業のお知らせ

最後のユニコーンの世界 

The Last Unicornと影の主題
ーアニメーション版The Last Unicorn における映像表現

11月4日、5日
東館11階3科共用演習室にて
1時より4時まで
(自由に入・退出できます。)

 アニメーション映画「最後のユニコーン」(1982)は、1968年に出版された原作の隠された主題であった「影と本体の関係性」を、映像表現として巧みに再編成することに成功している。原作の形而上的で難解な影の主題の根幹的解釈を行う前に、映像表現による影というモチーフの応用例を即物的に確認していくことにより、意外な緻密性を備えたこのアニメーション映画の完成度の高さを味わってみたい。

1.jpg
 タイトルがあらわれる前のオープニングのシーンでまず姿を現すのは、森の守り神であるユニコーン自身ではなく、彼女の影なのである。

2.jpg

 オープニング・シーンの後に続くタイトル・バックの画面では、この物語の主人公のユニコーンではなく、タペストリーに描かれたユニコーンの姿が示される。伝統的なユニコーンのイメージとは、確かにクリュニー美術館やメトロポリタン美術館等に保管されているタペストリーによって伝えられてきたものであった。
 これらの基幹的イメージとこの作品において実際に描かれることとなるユニコーン像の微妙な落差が、主題として重要な意味を主張することになるのだが、タペストリーの中のユニコーンさえもが、水面に映った反転した鏡像として提示されているのである。

3.jpg

 さらにタイトル・バックの画面は、タペストリーの内部で上方に焦点を移動し、雲の形の変化の一つとして、ユニコーンの姿を映し出す。あてどない雲の形に狂気の幻想を仮託して語るハムレットの場合のように、幻想の中に浮かぶ虚像としてのユニコーン像が、もう一つの影の存在属性を暗示するのである。








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