Archive for 30 October 2006

30 October

学園祭公開授業 2

和洋女子大学学園祭公開授業のお知らせ

最後のユニコーンの世界 

The Last Unicornと影の主題
ーアニメーション版The Last Unicorn における映像表現

11月4日、5日
東館11階3科共用演習室にて
1時より4時まで
(自由に入・退出できます。)

 アニメーション映画「最後のユニコーン」(1982)は、1968年に出版された原作の隠された主題であった「影と本体の関係性」を、映像表現として巧みに再編成することに成功している。原作の形而上的で難解な影の主題の根幹的解釈を行う前に、映像表現による影というモチーフの応用例を即物的に確認していくことにより、意外な緻密性を備えたこのアニメーション映画の完成度の高さを味わってみたい。

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 狩人達の「ユニコーンは、みんないなくなった。」という言葉を聞いて不安にかられたユニコーンは、泉に自分の姿を映して、自分自身のあり方について改めて思いめぐらす。これまでは自分の美しい姿を映し出して、ただ満足の気持ちを覚えていたユニコーンにとっては、自己の存在の意味に対する疑問を抱くことは、完璧であった筈の神話的存在の霊的な揺らぎを体験することである。

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 そんなユニコーンの前に一匹の蝶が姿を現す。「そよ風から躍り出てきた」と語られているように、あまりにも微小でほとんど無に等しい存在性に属する蝶は、反転して全てに繋がる記憶と意識を持っているかのように、とりとめのない、けれども常軌と理性を逸した深い真実を語ってくれることとなる。彼はユニコーン自身の影であり、他の全てのものの影でもあり得るかのような、時空と精神の連続体としての判断と知力を示す。

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 蝶の言葉に耳を傾けるユニコーンの姿である。

“You can find the others if you are brave. They passed all the ways long ago. And the Red Bull ran close behind them and covered their footprints.”
(勇気を失うことさえなければ、仲間達を見つけることができます。ユニコーン達は遠い昔にあらゆる道を走り去り、赤い牡牛がその後を追い、足跡を消し去ってしまいました。)

蝶の姿がユニコーンの顔の上に影を落としているのだが、彼等の交わした会話そのものが、ユニコーン自身の夢想でもあるかのように読み取れる。


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