Archive for 11 February 2006

11 February

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 87


 It was indeed the crocodile. It had passed the redskins, who were now on the trail of the other pirates. It oozed on after Hook.
 Once more the boys emerged into the open; but the dangers of the night were not yet over, for presently Nibs rushed breathless into their midst, pursued by a pack of wolves. The tongues of the pursuers were hanging out; the baying of them was horrible.
 "Save me, save me!" cried Nibs, falling on the ground.
 "But what can we do, what can we do?"
 It was a high compliment to Peter that at that dire moment their thoughts turned to him.
 "What would Peter do?" they cried simultaneously.
 Almost in the same breath they cried, "Peter would look at them through his legs."
 And then, "Let us do what Peter would do."
 It is quite the most successful way of defying wolves, and as one boy they bent and looked through their legs. The next moment is the long one, but victory came quickly, for as the boys advanced upon them in the terrible attitude, the wolves dropped their tails and fled.
 Now Nibs rose from the ground, and the others thought that his staring eyes still saw the wolves. But it was not wolves he saw.
 "I have seen a wonderfuller thing," he cried, as they gathered round him eagerly. "A great white bird. It is flying this way."
 "What kind of a bird, do you think?"
 "I don't know," Nibs said, awestruck, "but it looks so weary, and as it flies it moans, 'Poor Wendy,'"
 "Poor Wendy?"
 "I remember," said Slightly instantly, "there are birds called Wendies."
 "See, it comes!" cried Curly, pointing to Wendy in the heavens.

 やって来たのは、確かにあの鰐でした。今は他の海賊達の後を追い続けているインディアン達の傍らを通り過ぎ、フックの姿を求めて、にじりよってきたのです。
 再び子供達は、外に顔を出しました。けれども、この晩の危険はまだ過ぎ去ってはいませんでした。というのは、まもなく狼の一群に追われたニブズが、息を切らして飛び込んで来たからです。追跡者達は舌を垂らし、恐ろしいうなり声をあげています。
 「助けて!助けて!」ニブズは倒れ込みながら叫びました。
 「どうしよう?どうしよう?」
 この恐ろしい危険に晒された時、子供達が一斉にピーターのことを思い浮かべたのは、ピーターにとっては誇りにできることでした。
 「ピーターだったら、どうする?」子供達は、みな同時に叫んだのです。
 ほとんど間を置くことなく、彼等は叫びました。「ピーターなら、両足の間から顔を出して、狼をせせら笑うだろう。」
 「ピーターがするように、僕らもやろう。」
 それは、狼達をたじろがせるには、うってつけの方法でした。子供達は、息を揃えてかがみ込み、足の間から顔をのぞかせました。その結果を待つのは、気掛かりな一瞬でした。けれども、勝利は速やかに訪れたのです。子供達が、この恐ろしい姿勢をとって狼達の方に近付いていくと、彼等は尻尾を垂らして逃げ出したのです。
 ニブズが立ち上がりました。子供達には、ニブズの大きく見開いた目が、まだ狼の姿を見ているように思えました。けれどもニブズの目に映っているのは、狼ではありませんでした。
 「すごいものを見つけたんだ。」好奇心一杯で集まった子供達に、ニブズが言いました。「白くて、大きな鳥なんだ。こっちの方に飛んで来る。」
 「何て言う鳥なんだい?」
 「分からない。」茫然とした様子で、ニブズは言いました。「とても疲れた様子で、飛びながら『ウェンディもう駄目。』ってうめくんだ。」
 「ウェンディもう駄目?」
 「僕、聞いたことがある。」スライトリーが、すぐさま口を出しました。「ウェンディっていう鳥がいるんだよ。」
 「見ろ、こっちに来るぞ。」カーリーが、空の上のウェンディを指差しながら言いました。

 自分の勝利に対する絶大な信奉と、好意的な運命に対する確信が、ピーターを常に成功へと導くのであるが、ここではそのピーターの行動の模倣さえもが、実質的な効果をあげることとなっている。ピーターというキャラクターの特質を見事に語る部分である。

用語メモ
 compliment:お世辞、あるいは賞賛である。順当に高い評価を得ることをこの言葉を用いて表現する。






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論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシー2:ファンタシーにおける非在性のレトリック─『最後のユニコーン』のあり得ない比喩と想像不能の情景”を新規公開中



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