Archive for 02 February 2006

02 February

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 78


 Next comes Nibs, the gay and debonair, followed by Slightly, who cuts whistles out of the trees and dances ecstatically to his own tunes. Slightly is the most conceited of the boys. He thinks he remembers the days before he was lost, with their manners and customs, and this has given his nose an offensive tilt. Curly is fourth; he is a pickle, and so often has he had to deliver up his person when Peter said sternly, "Stand forth the one who did this thing," that now at the command he stands forth automatically whether he has done it or not. Last come the Twins, who cannot be described because we should be sure to be describing the wrong one. Peter never quite knew what twins were, and his band were not allowed to know anything he did not know, so these two were always vague about themselves, and did their best to give satisfaction by keeping close together in an apologetic sort of way.

 その後には、陽気で屈託のないニブズがやって来ます。さらに後には、スライトリーが続きます。スライトリーは木の枝を切って笛を作り、自らが吹く音色に有頂天になっています。スライトリーほどうぬぼれの強い少年はいません。彼は、自分が失われた以前のことを、習慣も流儀も何もかも覚えていると信じ込んでいて、えらそうに鼻を聳やかしているのです。次はカーリーです。この少年は、どじばかり踏む子で、あまりに何度もしくじりを犯し、ピーターが「これをやった者は出てこい」と言う度に前に進み出るものですから、今は身に覚えがあろうがなかろうが、ピーターの声がかかると無意識のうちに進みでてしまうのです。最後にやって来るのが双子です。ここでは彼等のことを詳しく語ることはできません。なぜなら、どうしても間違った方の子を選んで語ってしまうからです。ピーターは、双子がどんなものか理解することは決してありませんでした。そしてピーターの手下の者達は、ピーターの知らないことを知っていることを禁じられていました。ですから、この二人は自分達のことが良く分からないまま、いつも済まなそうな顔をして寄り添ったままでいることで、なんとかピーターの機嫌を損ねないでいようとしているのでした。

 遠い昔から伝統的に、双子は悪性の干渉を与えあう不吉な属性の持ち主であるとして、忌み嫌われてきた。これは全一的世界観を形成する根幹的理論である、天球図による性格判断等の知識体系と同等の発想によって成り立つ“迷信”の一つなのである。分極生成した対として、あるいは本体と影の関係をなす具象物として、自己認識において決定的な欠陥を持つピーターが双子に対する明確な理解を持たないのは当然である。
 “描きようがない”と語ることによって語る描写の手法が用いられている。



用語メモ
 pickle:キュウリなどの酢漬けのことだが、要領が悪く“窮地に陥ってばかりいる人”のことをこう呼ぶ。

「ミクシィ」でコミュニティ「アンチ・ファンタシー」を開設しました。
◆「最後のユニコーン」に関するSue Matheson氏の論文の解説等を行っています。
◆ アニメーション版「最後のユニコーン」における視覚表現についての解説を公開中です。
◆ ピーター・ビーグルに関する書誌データを公開中です。

http://mixi.jp/view_community.pl?id=427647

参加希望の方は、以下のアドレスにご連絡下さい。招待メールをお送りします。

kuroda@wayo.ac.jp



メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシー2:ファンタシーにおける非在性のレトリック─『最後のユニコーン』のあり得ない比喩と想像不能の情景”を新規公開中



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