Archive for 20 February 2006

20 February

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 96


 Peter, seeing this to be a good idea, at once pretended that it was his own. The house was quite beautiful, and no doubt Wendy was very cosy within, though, of course, they could no longer see her. Peter strode up and down, ordering finishing touches. Nothing escaped his eagle eyes. Just when it seemed absolutely finished:
 "There's no knocker on the door," he said.
 They were very ashamed, but Tootles gave the sole of his shoe, and it made an excellent knocker.
 Absolutely finished now, they thought.
 Not a bit of it. "There's no chimney," Peter said; "we must have a chimney."
 "It certainly does need a chimney," said John importantly. This gave Peter an idea. He snatched the hat off John's head, knocked out the bottom, and put the hat on the roof. The little house was so pleased to have such a capital chimney that, as if to say thank you, smoke immediately began to come out of the hat.
 Now really and truly it was finished. Nothing remained to do but to knock.
 "All look your best," Peter warned them; "first impressions are awfully important."
 He was glad no one asked him what first impressions are; they were all too busy looking their best.

 ピーターは、これは良い考えだと思って、すぐさま自分の意見だと思い込むことにしました。とても美しい家ができました。ウェンディは、中に居てきっと居心地が良いはずです。外からはもう、ウェンディの様子が見えませんでしたけれど。ピーターは周囲を歩き回って、あちらこちら最後の仕上げの指示を出しました。ピーターの鋭い目からこぼれたものはありません。これで完璧に仕上がったと思われた時、
 「ドアにノッカーが付いてない。」ピーターが言いました。
 子供達は、これはしまったと思いました。でも、トゥートゥルズが、自分の靴の中敷きをさし出しました。これがぴったりのドア・ノッカーになりました。
 これでもうすっかり出来上がったと、みんなは思いました。
 まだまだ。「煙突がないじゃないか。」ピーターが言いました。「煙突は、絶対つけなきゃ。」
 「確かに、煙突は必要だ。」ジョンが勿体をつけて言いました。そこでピーターは、いいことを思い付きました。ピーターはジョンの帽子をひったくると、底を突き破って、屋根の上に乗せました。小さな家は、立派な煙突を付けてもらって大喜びで、お礼でも言うかのように、この帽子から煙が湧き出てきました。
 これで、本当になにもかも出来上がりです。もう、ドアをノックするくらいしか、残っていることはありません。
 「全員、最高の表情をするんだぞ。」ピーターがきつく言いました。「何と言っても、第一印象が大事だからな。」
 ピーターは、誰も第一印象というものがどんなものなのか尋ねなかったので、安心しました。みんな、自分の最高の表情をするので手一杯だったのです。

 メイク・ビリーブは、心の中に抱いた願望を夢想することなので、知覚や感覚を幻惑するに留まらず、本当に外界に夢想した出来事を実現させてしまう。意識の内界と外部世界が繋がっているネバーランドにおいては、当然これは可能なことである。

用語メモ
 因果関係:現実世界の因果関係においては、暖炉で火を燃やした結果として煙突から煙が出る。メイク・ビリーブの世界であるネバーランドにおいては、煙突を与えられたことに満足した家が、煙突から煙を吐き出す。見かけともっともらしさが全てを支配する、夢想の世界における事象の生成原理である。





「ミクシィ」でコミュニティ「アンチ・ファンタシー」を開設しました。
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参加希望の方は、以下のアドレスにご連絡下さい。招待メールをお送りします。

kuroda@wayo.ac.jp



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論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシー2:ファンタシーにおける非在性のレトリック─『最後のユニコーン』のあり得ない比喩と想像不能の情景”を新規公開中




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