Archive for 22 February 2006

22 February

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 98


 In they went; I don't know how there was room for them, but you can squeeze very tight in the Neverland. And that was the first of the many joyous evenings they had with Wendy. By and by she tucked them up in the great bed in the home under the trees, but she herself slept that night in the little house, and Peter kept watch outside with drawn sword, for the pirates could be heard carousing far away and the wolves were on the prowl. The little house looked so cosy and safe in the darkness, with a bright light showing through its blinds, and the chimney smoking beautifully, and Peter standing on guard. After a time he fell asleep, and some unsteady fairies had to climb over him on their way home from an orgy. Any of the other boys obstructing the fairy path at night they would have mischiefed, but they just tweaked Peter's nose and passed on.

 子供達は家の中に入りました。どうしてそこに全員が入り込めるだけの余裕があったのか、不思議です。でも、ネバーランドでは、ぎゅっと詰め込むことができるのです。そしてこれが、彼等がウェンディと一緒に過ごした多くの楽しい晩の、最初の時となりました。その後でウェンディは、子供達を木の下の地下の隠れ家の大きなベッドに寝かし付けてやりました。でも自分は、この小さな家の中で眠ったのです。ピーターは、外で短剣を構えて、見張りをしました。海賊達が遠くで酒宴を開いて騒ぐ物音が聞こえ、狼達も辺りをうろついていたからです。小さな家は暗闇の中で、窓からは灯りが煌々と漏れ、煙突からはきれいな煙が流れて、ピーターも番をしてくれていて、とても安全で居心地良さそうに見えました。しばらくしてから、ピーターもまた眠りに落ちました。宴会の帰りの何人かの妖精達が、足をふらつかせてピーターの体を乗り越えて行かなければなりませんでした。誰か他の子供達がこんな風に妖精の通る道を塞いでしまっていたら、きっとひどい目に遭わされていたことでしょう。でも妖精達は、ピーターの鼻をつまんだだけで、通り過ぎて行きました。

 ここでもピーターとロスト・ボーイズ達の世界であるネバーランドが、霊的・心理的関係においてばかりでなく、空間的・物理的にも願望に流動的に対応して、存在の様態を柔軟に変化させ得るものであることが分かる。文字通り全てが意のままになる理想郷であるが、現実として実体化した後ではその理想郷は、思いもよらない無気味な側面を覗かせることともなる。

用語メモ
 squeeze tight:“ぎゅっと締め付けること”、“押し込むこと”である。願望と目的以外の夾雑物の全てがすっきりと排除された手軽な理想の実現を、即物的な表現で見事に語った言い回しである。




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