Archive for 23 February 2006

23 February

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 99


Chapter 7

THE HOME UNDER THE GROUND

 One of the first things Peter did next day was to measure Wendy and John and Michael for hollow trees. Hook, you remember, had sneered at the boys for thinking they needed a tree apiece, but this was ignorance, for unless your tree fitted you it was difficult to go up and down, and no two of the boys were quite the same size. Once you fitted, you drew in your breath at the top, and down you went at exactly the right speed, while to ascend you drew in and let out alternately, and so wriggled up. Of course, when you have mastered the action you are able to do these things without thinking of them, and nothing can be more graceful.
 But you simply must fit, and Peter measures you for your tree as carefully as for a suit of clothes: the only difference being that the clothes are made to fit you, while you have to be made to fit the tree. Usually it is done quite easily, as by your wearing too many garments or too few, but if you are bumpy in awkward places or the only available tree is an odd shape, Peter does some things to you, and after that you fit. Once you fit, great care must be taken to go on fitting, and this, as Wendy was to discover to her delight, keeps a whole family in perfect condition.

 次の日にピーターが最初にしたことの一つは、ウェンディとジョンとマイケルの体を木の穴に合わせることでした。覚えておいでだと思いますが、フックは、子供達が一人一人に入り口に使う木が必要だと考えていたのを、愚かなことだと嘲笑っていました。でもこれは、フックが事情を理解していなかったからです。なぜなら、自分の大きさにぴったり合った木でない限り、上下に移動することは困難なのです。誰一人として、ぴったり同じ大きさの子供はいないのです。自分の木にもぐり込むと、息を吸い込みます。すると丁度良い速度で下に降りて行くことができます。木の穴を登る時には、息を吸い込んだり息を吐き出したりを交互に行います。そうして這い上がっていくのです。勿論、一度このやり方を身に付ければ、次にはもう何も意識することなく、同じ動作を行うことができます。この上なく速やかに事が運ぶのです。
 でも、まず体の大きさが合わなければいけないのです。ですからピーターは、着物を体に合わせるように、とても注意して木を選ぶのです。着物との違いと言えば、着物は体に合わせるのに対して、木の場合は既にある木に自分の体を合わせるということです。普通は、これもとても簡単に出来てしまいます。着物を沢山着込んだり、あるいは着物の枚数を減らしてしまえばよいのです。でも具合の悪い箇所でつかえたり、体に合う唯一の木が歪んだ形だったりすると、ピーターがその子にちょっと手を加えます。するとぴったり合うようになるのです。一旦木に体を合わせると、ちゃんと合ったままでいられるように、入念な配慮がなされなければなりません。そして、ウェンディがそのことを知ってとても喜んだことに、この行いが子供達全員を完璧な状態に保ってくれたのです。

 決して大きくなることがないピーターの秘密の一端を語るような記述である。成長と変化を堅く禁じ、日々の変化を丹念に矯正していく手順がネバーランドには存在していることが分かる。

用語メモ
 fit:“合わせる”ことである。何もかもが思いのままになる理想郷である筈のネバーランドで実際に暮らし始めると、様々な条件に“合わせる”作業を日課として維持して行くことが必要となるのである。





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