Archive for 26 February 2006

26 February

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 102


 I suppose it was all especially entrancing to Wendy, because those rampagious boys of hers gave her so much to do. Really there were whole weeks when, except perhaps with a stocking in the evening, she was never above ground. The cooking, I can tell you, kept her nose to the pot. Their chief food was roasted bread-fruit, yams, coconuts, baked pig, mammee-apples, tappa rolls and bananas, washed down with calabashes of poe-poe; but you never exactly knew whether there would be a real meal or just a make-believe, it all depended upon Peter's whim. He could eat, really eat, if it was part of a game, but he could not stodge just to feel stodgy, which is what most children like better than anything else; the next best thing being to talk about it. Make-believe was so real to him that during a meal of it you could see him getting rounder. Of course it was trying, but you simply had to follow his lead, and if you could prove to him that you were getting loose for your tree he let you stodge.

 ティンクの部屋は、ウェンディにはとりわけ魅力的なものだったろうと思います。何故ならば、男の子達は本当に手が掛かってしょうがなかったからです。実際、晩にちょっと繕い物の靴下を手に出る場合などは除くとして、一週間丸々地上に出ることも出来なかったことが、何度もありました。食事の支度のために、ウェンディはお鍋に付きっきりでした。彼等の主な食事は、パンの実を焼いたもの、ヤムにココナツに丸焼きの野ぶた、マミーの実やタッパ・ロールに、ポーポーの実の殻でおろしたバナナなどでした。でも本当の食事にありつけるのか、ただのメイク・ビリーブの食事になるのか、それは誰にも分かりませんでした。みんなピーターのきまぐれ次第だったのです。ピーターはもしゲームの一部としてなら、本当に「食べる」ことができました。けれどもピーターには、お腹を一杯にするために「詰め込む」というのはできませんでした。子供達がみんな何よりも望んでいたのはそのことだったのですけれど。その代わりにできることといえば、食べ物のことについて話すことでした。メイク・ビリーブは、ピーターにとっては事実と変わりのないことだったので、食事の振りをしている間に、ピーターのお腹がふくらんでくるのを見ることさえできました。もちろんこんなのはつらいことでした。けれどピーターの言うことには、従うしかありませんでした。そして子供達が、自分の木に合わせるには体が細くなりすぎてしまったことをピーターに見せてやれた時には、ピーターは子供達に本当に食べさせてくれるのでした。

 ネバーランドにおいては、子供達は毎日食物を口にする生命活動である“生活”を行ってはいない。成長することと“生きる”ことを中止して、無時間性の夢想の中に浮遊するネバーランドにおいては、食事は専横な神のごとき存在であるピーターによって、見せ掛けのmake-believeのゲームとして行うことを強いられているのである。

用語メモ
 yam:ヤマノイモ属の植物。根を食用とする。
 mammee apple:オトギリソウ科マンメア属の植物。実をジャムにする。
 tappa:“tapa”(カジノキ)のことだと思われる。“paper mulberry”とも言う。クワ科のコウゾの類の植物。樹皮を布の材料に用いる。
 calabash:ノウゼンカズラ科の植物。ひょうたんのような実を生じる。




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