Archive for 27 February 2006

27 February

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 103


 Wendy's favourite time for sewing and darning was after they had all gone to bed. Then, as she expressed it, she had a breathing time for herself; and she occupied it in making new things for them, and putting double pieces on the knees, for they were all most frightfully hard on their knees.
 When she sat down to a basketful of their stockings, every heel with a hole in it, she would fling up her arms and exclaim, "Oh dear, I am sure I sometimes think spinsters are to be envied!"
 Her face beamed when she exclaimed this.
 You remember about her pet wolf. Well, it very soon discovered that she had come to the island and it found her out, and they just ran into each other's arms. After that it followed her about everywhere.

 縫い物や繕い物をする、ウェンディのお気に入りの時間は、子供達がみんな床についた後でした。その時だけ、彼女の語るところによれば、一人になってようやく一息つける、ということでした。そしてこの時をウェンディは、子供達のために何か新しいものをこしらえたり、膝のところに当て布をしたりして過ごすのでした。誰もがみんな膝のところを酷使する事といったら大変なものでしたから。
 どれもがみな、かかとに穴をこしらえた、籠に一杯の靴下を傍らにして座り込みながら、ウェンディは両手を宙に投げ出して叫ぶのです。「まったく、時には未婚の女達のことを、恨めしく思うこともあるもんだわ。」
 こんな風に愚痴をこぼしながら、ウェンディの顔は晴々と輝くのでした。
 ウェンディのかわいがっていた狼のことは、覚えておいででしょう。まもなくこの狼は、ウェンディが島にやってきたことに気付き、ウェンディのところにやって来たのでした。そして二人は両手で抱きしめ合ったのです。この狼は、その後はウェンディの行くところどこにでも付いて来るようになったのでした。

 実生活の苦労は、ネバーランドにおいては、表面的に模倣する遊戯の素材でしかない。すべての行動が、メイク・ビリーブとしての演技でしかないからである。そしてまた、ウェンディの夢想のなかにのみ存在していたペットの狼は、以前からこの島に生活していただけでなく、ウェンディの来訪を敏感に察知し、自らウェンディの許に姿を現してくれる。そして旧知のものとして、情愛に満ちた初対面の邂逅を喜び合うのである。ネバーランドの意識内に具現化した、亜空間としての特質がここでも暗示されている。

用語メモ
 spinster:日本語では“オールド・ミス”などと呼ばれたりもする。






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