Archive for 07 February 2006

07 February

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 83


 I will tell you where they are. With the exception of Nibs, who has darted away to reconnoitre, they are already in their home under the ground, a very delightful residence of which we shall see a good deal presently. But how have they reached it? for there is no entrance to be seen, not so much as a large stone, which if rolled away, would disclose the mouth of a cave. Look closely, however, and you may note that there are here seven large trees, each with a hole in its hollow trunk as large as a boy. These are the seven entrances to the home under the ground, for which Hook has been searching in vain these many moons. Will he find it tonight?
 As the pirates advanced, the quick eye of Starkey sighted Nibs disappearing through the wood, and at once his pistol flashed out. But an iron claw gripped his shoulder.
 "Captain, let go!" he cried, writhing.
 Now for the first time we hear the voice of Hook. It was a black voice. "Put back that pistol first," it said threateningly.
 "It was one of those boys you hate. I could have shot him dead."
 "Ay, and the sound would have brought Tiger Lily's redskins upon us. Do you want to lose your scalp?"
 "Shall I after him, Captain," asked pathetic Smee, "and tickle him with Johnny Corkscrew?" Smee had pleasant names for everything, and his cutlass was Johnny Corkscrew, because he wiggled it in the wound. One could mention many lovable traits in Smee. For instance, after killing, it was his spectacles he wiped instead of his weapon.
 "Johnny's a silent fellow," he reminded Hook.
 "Not now, Smee," Hook said darkly. "He is only one, and I want to mischief all the seven. Scatter and look for them."

 子供達がどこにいるか、教えて差し上げましょう。偵察に飛び出したニブズを除いて、子供達は全員もう地下の隠れ家に入っているのです。これからじっくりと見て頂くことになる、とても楽しい住居です。でも、どうやって子供達は、ここに入ることが出来たのでしょう。入り口らしきものはどこにも見当たらず、転がしたら穴の口でも見つかりそうな大きな石さえも、周囲にはないのです。でももっと目を凝らして見てみると、この辺りには7本の大きな木が立っているのが分かります。そしてどれもが、子供一人分の大きさの穴をその幹に空けているのです。これらが地下の隠れ家に続く7つの入り口なのです。フックは、もう何か月もこれを探し続けていたのです。今晩は見つけることができるのでしょうか?
 海賊達が近付いて来た時、スターキーの鋭い目が、ニブズが森の中に入っていくのを見つけました。即座に彼のピストルが躍り出ます。けれども鉄の鉤爪が彼の肩を押さえたのでした。
 「親分、やらしてくれ。」スターキーは、もがきながら言いました。
 さて、ここで始めてフックの声を耳にすることができます。それは無気味な声です。「ピストルをしまうんだ。」脅すように言いました。
 「あんたの嫌いなあの子供達の仲間ですぜ。撃ち殺してやったのに。」
 「そうしたら、銃声がタイガー・リリーのインディアンの仲間を引き付けてしまっただろう。頭の皮を剥がれたいのか?」
 「あっしがやりましょうか、親分。」哀愁に溢れたスミーが尋ねました。「ジョニー・コークスクリューでくすぐってやりますぜ。」スミーは何にでも面白い名前を付けるのです。彼の舶刀に付けられた名前が、ジョニー・コークスクリューでした。この刀を回転させて、傷口をえぐるからです。このスミーという男については、様々な愛嬌のある特徴をあげることができます。例えば、スミーが誰かを殺した後、彼が最初に血糊を拭うのは刀ではなく、眼鏡なのです。
 「ジョニーなら静かにやりますぜ。」スミーが言いました。
 「今は、待て。」フックは無気味な声で言いました。「奴を片付けても、一人だけだ。俺は7人全員を殺りたいんだ。散開して、痕跡を探せ。」

 この物語においては、残忍さはいささかも登場人物達の愛嬌を損なうことはない。人物の行う残虐行為は、むしろ必要不可欠な個別の性格決定要素として、物語を彩る重要な役目を果たしている。独特の美学と個有の価値観に基づく、ネバーランド独自の公理系が存在するからである。

用語メモ
 pathetic:“哀れを誘う”、“痛ましい”、“感極まる”といった意味の形容詞である。フックと対照されるべきひときわ興味深い海賊の手下スミーに与えられた、奇妙なエピセットなのである。
 cutlass:舶刀。backswordあるいはsaberの一種。18世紀に船乗り達によって用いられた。
 corkscrew:螺旋金具のコルク栓抜き




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